ほんのしばらく前、日本語メディアで嬉々として報道していた
(ように見えた)盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の国家機密流出事件、あれ、一体どうなったんでしょうかね?
あ、ここで私が気にしているのは事件の結果とかじゃなくて、その事件を嬉々として報道していた
(ように見えた)報道機関が、ことの顛末をその後も報道したのかってこと。
「韓国 大統領 流出 盧武鉉」といったキーワードでググってみると、出てくるのはいわゆる“朝・中・東(朝鮮・中央・東亜日報)”と呼ばれる保守系大手新聞の日本語版や、日本の大手新聞や、右派系ブログや、2ちゃんばかり。わざわざページ開いてまでして読みませんが、見出しを見る限りでは「叩いて、騒いで、終わり」という印象。
でもね、実際は下の記事のようにぜんぜん大したことじゃないことを、支持率が下がりまくりの李明博政権が騒ぎ立てただけみたいですよ。まるで、怒られたら「だって、○○ちゃんが悪いんだもん」と責任転嫁する子供のような・・・。ホントに大丈夫か、この国。
MB(ミョンバク)が歌う「みんな盧武鉉のせい」
(『ハンギョレ21』 2008年07月17日 第719号)
内容は何もなく、政治的なだけの‘大統領記録物流出攻防’のプロセス
▣チェ・ソンジン記者
李明博(イ・ミョンバク)政府と参与政府(盧武鉉政府)の大統領記録物流出攻防をしっかり理解するために投げかけなければならない質問の一つは「一体、なぜ」だ。
現在、青瓦台が峰下村(盧武鉉前大統領が退任後に居住している村)を狙って主に問題提起している内容、すなわち「何を、どう」に対する論争は、微細な点で違いが生じている。「幽霊会社が動員されるなど、大統領の記録物と原本ハードディスクの流出が組織的かつ計画的に行われた」という青瓦台の主張が正しいとしても、盧武鉉前大統領が当初から自分に閲覧権限がない記録物を引っ掻き回す性格のものではない。
△大統領記録物流出問題に対する李明博政府の攻勢が吹き荒れている。2月25日、李明博大統領の就任式に参列した前・現大統領。(写真/聯合ニュース)
問題は、この過程で盧武鉉前大統領が適法な手続きを経たのかという点だ。峰下村側はこれについて、「この問題は前大統領に対する正当な(記録物)閲覧権が保障されていないために生じた過渡期的な状況」としながらも、「これまでこの問題をめぐって青瓦台側と協議してきたが、突然このように問題提起する理由がわからない」と言及した。
両側の主張が食い違っているが、真偽がどこにあるとしてもも、見てはならないものを見たわけではなく、青瓦台に残さなければならないものを峰下村に持って行ったわけでもないのだから、それ自体が大した問題ではないというのが専門家たちの見解だ。盧武鉉前大統領側は、これまで37万件の指定記録物をはじめ、合計825万件の原本を国家記録院に残したと伝えてきた。
「青瓦台の主要関係者→朝・中・東→政界拡大」のプロセス
ならば検討してみなければならない内容は、青瓦台が今回の騒動を起こした過程と方法だ。青瓦台は7月8日に出した説明資料についてこのように話した。「大統領の記録物を無断で不法搬出した件は政治問題ではなく、法と原則、すなわち法治に関するものだ」。これは前政権に対する政治的報復なのではないのか、という民主党の主張に対する反駁だった。
青瓦台の主張と異なり、今回の事件はすでに政治的争点となった。その過程からして随分と政治的だった。政治部の記者ならば誰でも知っている匿名の‘青瓦台の主要関係者’が、朝・中・東にこっそりと関連事実を漏らしたのだ。翌日これらの新聞には‘国家機密’、‘綱紀混乱’、‘無断・不法搬出’など政治的意図が多分に含まれているとしか思えない青瓦台の主張が、巨大な引用符と共にそのまま載せられた。‘青瓦台の主要関係者’は翌日、記者たちを前にこれを再び「否定しない」という表現で強調した。
騒動はハンナラ党指導部の強度の高い発言を経て政界に‘拡大’した。論争が本格的に点火した7月10日、ハンナラ党のクォン・ヨンセ事務総長はラジオのインタビューで「サイバー上で院政を敷こうとしたのではないか」と盧武鉉前大統領を直接的に狙った。このレベルになると、民主党としても黙っているわけにはいかなくなった。自然に‘ハンナラ党vs民主党’あるいは‘李明博vs盧武鉉’の構図が完成したのだ。
李明博大統領と青瓦台が政治的危機の局面で、盧武鉉前大統領や参与政府を巻き込んだのは今回が初めてではない。
李大統領は3月15日、「青瓦台に入った2月25日夜に青瓦台のコンピューターが作動しなかった」とし、参与政府のせいにした。いわゆる‘ログイン事件’だ。言論はその後、李大統領がコンピューターを起動できなかった理由は、ログインのパスワードがわからなかったからだと青瓦台高官の話を通じて紹介した。李大統領は同月19日、再び参与政府を狙って、「最近5年間、目の前の輸出好況だけを信じて、迫り来る危機に備えられなかった」と話した。総選挙を目前に控えた状況で大統領が直接経済危機と‘政治的安定’を強調し、参与政府のせいにしたのだ。
李大統領側は‘江・不・富(高級住宅街の江南・不動産・富者)’、‘高・所・嶺(高麗大学卒・所望教会信者・嶺南地方出身)’人事の波紋が広がった際も「参与政府が人事ファイルを残さなかったので、検証過程でミスがあった」、「参与政府の不動産政策の失敗で、不動産価格がとてつもなく上がった」というような弁明を貫いた。これもやはり事実と違ったり、まったく話にならない主張だった。実際、参与政府側は人事検証に必要な資料を残したのはもちろん、人事検証マニュアルについても詳細に助言した。
江・不・富も、牛肉も-「みんな参与政府のせい」
さらに李明博政府での天下り人事は、そのほとんどが人事検証の基礎段階でひっかからなければならないような人たちだった。財産申告の内訳や基本的な納税資料などを調べさえすれば、半日足らずで深刻な問題があらわになる人事だったが、李大統領側とハンナラ党では今でも「資料がないので検証できない」という主張を繰り返している。
もっとも最近では、米国産牛肉不実現象に対する責任論に火がつくと、李大統領が直接「牛肉交渉は拙速に行われたのではなく、参与政府のときに出された条件に従って合意したもの」だと明らかにした。イ・ドングァン青瓦台スポークスマンはさらに輪をかけ、「盧武鉉前大統領が自分の任期内にすると言っておきながらしなかったことを(新しい政府が)尻拭いをした」のだと話した。これに対して参与政府の元幹部は、最近『ハンギョレ21』とのインタビューで「李明博政府発足の直前、牛肉問題をめぐって両側で議論した際も急いで処理してはならないという立場をはっきりと伝えたのに、今さら参与政府のせいにするとは記憶力がないか、良心がないとしか思えない」と語った。
以上が李明博政府が参与政府を政治舞台に‘呼び出し’した主な事例だ。大概、李大統領が行き詰るところまで追いやられたときに火がついた。最近の大統領記録物流出をめぐる両側の攻防も、このような脈絡の中で出てきた。ロウソク集会から始まった政治的危機や物価暴騰、シーソーゲームを続ける為替などによる経済的危機が重なると、「国政運営をちゃんと行えないような記録物ばかりを置いていった」(いわゆる青瓦台主要関係者)という論理を打ち出し、局面打開を図っているという分析が可能だ。匿名を条件にしたある政界関係者は、「執権初期の現職大統領ならば誰よりも強者だと言えるが、しょうもない揚げ足取りをして一般人に戻った前大統領を困らせているという印象を免れない」とし、「危機脱出のための局面打開用カードは、国民たちが‘局面打開用’として認識する瞬間からその効力が消える」と語った。
歴代大統領の側近も、「大統領記録物関連の騒動が政治的焦点にまで広がるのは適切ではない」と口をそろえている。金泳三元大統領在任中、青瓦台民政秘書官を務めたパク・ジョンウン元ハンナラ党議員は、「記録物流出に関する是々非々は、はっきりと分けなければならないが、政治的論争に拡大することは望ましくない」と語った。パク元議員はまた、「李大統領側に政治的計算があってのことではないだろうが、(仮にそうだとしても)役には立たない」と話した。
「前政権に報復する悪習はなくすべき」
国民の政府(金大中政府)で大統領秘書室長を務めたパク・ジウォン議員(無所属)は、盧武鉉前大統領が大統領記録物を体系的に管理し、残しておいた事実についてむしろ評価されるべきだと指摘した。「事実関係について正確に分かりうるポジションにいるわけではないが、盧武鉉大統領が記録物の原本を丸ごと持っていったのなら、それは過ちでしょう。そうだとしても返還すればいいことで、事前に両側の了解があったのならばそれで終わりにすべきです。まったく問題になるようなことではありません。それよりむしろ、国民の政府と参与政府が多くの資料を集めて残しておいたことについては評価されるべきです。前の政権までは、大統領記録物というもの自体がありませんでしたから」。
参与政府の初期国政状況室長を務めたイ・グァンジェ民主党議員も、「一方に記録物を管理する責任があるのならば、もう一方は閲覧する権利がある」とし、「一日でも早く閲覧システムを構築し、記録を回収できるようにすればいい」と話した。そして「前政権に対する報復政治を行う悪習はなくすべきだ」という話を付け加えた。騒動自体が不必要だという意味だ。
権力機関の言葉は政治的、あるいは社会的脈絡の中で理解するべきだ。同じ発言だとしても、誰が、どのような場所で、どのように言ったのかによって意味は180度変わりかねない。文章一つ、単語一つ、さらには助詞までも、いいかげんに聞き流していいものではない。‘青瓦台の主要関係者’たちの発言内容よりも、‘国家機密’、 ‘綱紀混乱’、‘無断・不法搬出’を云々するその本心にさらに強い関心が向かう理由だ。