韓国で今でも連綿と続いているロウソク・デモ。当初は米国産牛肉輸入反対、アメリカとの再交渉を求めるものでしたが、焦点は教育問題や物価対策、公共部門の民営化反対、さらにはロウソク集会に対する強圧的な鎮圧・連行に対する糾弾など、さまざまな分野に広がりつつあります。
批判の矛先も、李明博政府や警察当局はもちろん、それらを擁護しているとしか思えないような記事ばかりを垂れ流してきた保守系メディア、特に「朝・中・東」と呼ばれる朝鮮日報、中央日報、東亜日報の保守系三大紙に広がっています。
ロウソクを手にデモや集会に参加した人々は、そのような紙媒体を尻目に主にインターネットや携帯電話で情報交換し、連帯してきました。その中でも活発に運動を展開してきたのはポータルサイトDaumのアゴラという討論板。「朝・中・東」に広告を掲載している企業に抗議したり、不買運動を起こしたり(拙ブログ6月27日「
私を断罪せよ」参照)、逆に広告を載せないことを表明した企業の商品の購買運動を展開したり・・・。「朝・中・東」にとっては目障りなことこの上ないのは想像に難くありません。
そんな「朝・中・東」がポータルサイトDaumに対して「ニュースを供給しない」という原始的な反撃に出ました。元々、「朝・中・東」の記事になど見向きもしなかった多くのネチズンは、逆に歓迎しているようですが・・・。この新・旧メディアの戦いの結末はどうなるのでしょうか。注目してみましょう。下の記事はハンギョレ新聞社が出している週刊誌、『ハンギョレ21』に掲載されていた記事です。それではどうぞ。
朝・中・東によるDaum抹殺
他の新聞社と連合してニュース供給を中断するシナリオ-経済5団体・検察・放送通信委員会・大韓弁護士協会が足並みを揃えて着々と
▣イ・テヒ記者
▣写真/ユン・ウンシク記者写真/イ・ジョンチャン記者
朝・中・東のニュース・コンテンツ中断→他の新聞社のニュース供給中断→ブログや掲示板の掲示物に対する著作権法違反告発→劣勢ユーザー離脱→Daum広告主の広告中断→Daum経営悪化
いわゆる‘Daum抹殺’シナリオだ。正確には‘広場’(アゴラ掲示板)を無力化するためのプロセスだ。
朝鮮・中央・東亜日報(朝・中・東)が、7月7日0時からポータルサイトDaumへのニュース・コンテンツの供給を中断する。朝・中・東は7月2日、ダウム・コミュニケーションに公文書を送り、このような事実を通告した。
△(写真/ハンギョレ21ユン・ウンシク記者)
全トラフィックに与える影響はほとんどない
偶然なのか前日の7月1日、別の大手ポータルサイトNAVERが緊急記者会見を開き、ニュースの編集権をニュース提供社に戻すことを明らかにした。新聞社や放送局に編集権を返すという意味だ。ニュー・メディア(ポータル)がオールド・メディア(保守新聞)に跪いた瞬間だった。同時に、NAVERとDaumに対する保守言論の対処が分かれた瞬間でもあった。
朝・中・東がDaumにニュース・コンテンツを中断するという噂は、6月初旬から流れていた。ニュース・コンテンツの中断は、Daumアゴラ掲示板で活発に展開されている保守新聞の広告主に対する圧迫運動に対応し、朝・中・東が準備していた第1の反撃カードだ。これを主導したのは『朝鮮日報』だと言われている。Daumアゴラで一番のターゲットになったのが『朝鮮日報』の広告主だったからだ。『朝鮮日報』と『東亜日報』は、新聞コンテンツだけでなく、週刊誌(『ウィークリー朝鮮』と『週刊東亜』)コンテンツも供給を中断する予定だ。『中央日報』の場合は、新聞コンテンツのみを中断した。
朝・中・東のニュース・コンテンツの中断は、短期的に保守的なDaumユーザーの離脱をもたらすと予想されている。ポータル業界のある関係者は、「まず保守新聞が狙っているのは、DaumとNAVERの政治的差別化だと思われる」「Daumを利用する保守的なユーザーたちをDaumから引き離す効果を狙っている」と語った。
しかしポータル情報の利用量を示すページ・ビュー(ユーザーが開いたウェブページ数)には、大きな影響がないだろうという予測だ。媒体よりもタイトルでニュースを選ぶネット・ユーザーたちの特性上、朝・中・東のニュースがインターネットのページ・ビューに占める割合は、それほど高くないからだ。
東洋証券のアナリスト、イ・チャンヨン氏は「ネット・ユーザーの調査機関である‘コリアン・クラブ’の資料を見ると、5月基準でダウム・コミュニケーションのニュース・セクションであるメディア・ダウム・トラフィック(利用量)で朝・中・東のコンテンツが占める割合は1.7%で、Daum全体のトラフィックに照らし合わせてみると0.4%に過ぎない」、「これを分析すると、朝・中・東の撤収がDaumの全トラフィックに与える影響はほとんどないと見ても差し支えない」と話した。
著作権法を強化すれば、ポータルを対象にした訴訟も可能
第2段階は、他の新聞社の追加撤収だ。ポータル業界のある関係者は、「朝・中・東に続き、他の新聞社もニュース提供を中断することを検討しているという噂がある」、「ニュース提供の中断が決定すれば、時期は7月中旬か下旬になると言われている」と語った。
これと関連し、保守系新聞の3社は他のメディアにもDaumにニュース・コンテンツの提供を中断するように協力を求めていると伝えた。現在、中央日刊紙や経済新聞などを中心に、5~7社の追加参与が議論されていると言われている。
『毎日経済』のある関係者は、「インターネット・ポータルにニュース提供を中断した場合に発生する様々な状況を勘案すれば、慎重に決めなければならない問題」だと明らかにした。『国民日報』のオンライン・ニュースを担当する『クッキー・ニュース』の関係者は、「まだ聞いたことはない」としながらも、「もしそんな話があれば、トップの方で議論するだろう」と経営陣レベルでの議論の可能性を示唆した。
朝・中・東ではない他の新聞社にも、ニュース提供の中断に加わる理由はある。これまでポータルが優位にいた関係を再構築し、ニュースの提供利用料の交渉などで有利な位置に立つためのカードとして活用できるからだ。しかし、自分たちもネチズンたちの集中的な攻撃対象になる可能性があり、即座にヌリチプ(新聞社サイト)訪問者数が減ることになるため、その悩みは深刻だ。
第3段階は著作権法を強化することだ。政府と与党の一部では、著作権法に違反したネチズンだけでなく、ポータルも連帯責任を問う方案が議論されている。
2007年から施行されている現行の著作権法でも、ポータルのブログやネットサークル、掲示板などに書き込まれたものの中から著作権違反の事例を見つけ出すことは難しくない。新聞記事全体を転載することは不法だからだ。出典を明らかにし、記事の一部を抜粋して引用したり、記事のURLをリンクしなければならない。ほとんどのネチズンはこのことを知らずに記事をそのまま載せている。今現在は、このような行為に空間のみを提供したポータルは著作権法違反容疑をかけられていないが、著作権法を強化して同時に処罰できるようにすれば問題は違ってくる。
新聞社は著作権法が強化された2007年から、事前の同意や許可なく記事を情報として提供した企業や小規模の業者を相手に著作権法違反訴訟を起こしている。新聞社が一々出てくるのではなく、特定の法務法人に一括して委任する形で行っているのだ。新聞社と法務法人は、訴訟結果によって受け取る補償額や合意金を一定の比率で分け合っている。今のところポータルを相手に訴訟を起こした新聞社はない。しかし万が一、著作権法がこのような形で強化されれば、Daumなどのポータルを相手にした訴訟も可能になる。そうなればポータルは莫大な補償をしなければならない状況に陥りかねない。ポータルは膨大な人員を動員して一々ネチズンたちが書き込んだものを照会し、監視しなければならない状況に直面することになる。これはポータルの費用増加と収益性悪化につながる。
大韓弁護士協会の訝しい声明書
これを機に放送通信委員会はインターネット上での名誉毀損、悪意のあるデマの流布など、不健全な情報を遮断するためにポータルなどのインターネット・サービス事業者に対する規制を大幅に強化する方針だ。ポータルなどの事業者に不法情報流布の遮断義務を課し、違反すれば処罰するということだ。ポータルはこれを阻止するためのモニタリングをする人材や組織を運営する義務を負うことになる。このような方向の情報通信網利用法改正案は、早ければ今年9月の定期国会に提出される見込みだ。
△チェ・フィヨンNHN代表が7月1日に緊急記者会見を開き、NAVERのニュース編集権を放棄するという、いわゆる‘オープン・キャスト’政策を発表している。(写真=ハンギョレ/キム・ミョンジン記者)
ポータル規制が全般的に強化される状況で監視と処罰がDaum側に集中した場合、ユーザーたちの離脱も予想される。現在もDaumアゴラ掲示板の書き込みが臨時措置(ブラインド処理)されたり、削除された場合、強く反発するネチズンたちが相当数いる。しかし、Daumとしては臨時措置・削除要求を受け入れるしかないという立場だ。Daumの広報チーム関係者は、「放送通信委員会の決定などに照らし合わせると、掲示物の削除要求に応じずに民事訴訟を起こされた場合、100%敗訴するしかなくなってしまう」と話した。
さらに恐ろしいのは、朝・中・東の利害に合わせて着々と動いている韓国社会の構造だ。6月18日に全国経済人連合会(全経連)などの経済5団体が朝・中・東の広告主に対する圧迫運動を中断するように要請した翌日、検察は朝・中・東の広告主圧迫運動に対する捜査方針を発表した。7月1日には放送通信審議委員会がDaumアゴラの朝・中・東広告主圧迫運動の書き込みに対し、違法との結論を下した。7月3日には大韓弁護士協会(大韓弁協)が、朝・中・東に対する広告中断圧迫運動は違法だという法律検討報告書を発表し、ロウソク集会の中断を求めた。警察が光化門の朝鮮・東亜日報社の本社ビルを(守るように)警察バスで取り囲んだ時点から、政府と韓国社会の権力機構は朝・中・東の利益保護のために一糸乱れず動いた。
もちろん、その背後には朝・中・東の影が見え隠れする。『ハンギョレ』の6月20日付の報道によると、経済5団体がネチズンたちの広告主圧迫運動を阻止するようにインターネット・ポータルに要請したのは朝・中・東の要求に従ったものだった。また、経済5団体はポータルに正式な公文書を送ったのでもなく、口頭による一種の協力要請をしたのだと伝えられた。朝・中・東の圧力に押され、‘無理強い’したという傍証だ。
Daum株価は↑、NAVER・朝鮮株価は↓
大韓弁協の声明書発表にも疑惑がある。大韓弁協は6月30日、各地方弁護士会に「現在の時局と関連した意見を募る」という公文書を送った。大韓弁協の公文書は「米国産牛肉の輸入に触発されて発生したデモの様相が初期の純粋性を失い、極限の暴力デモに変貌する恐れのある状況に向かっている」という前提で書かれていた。当初、締め切りは「7月4日午後6時」までだった。しかし、大韓弁協は全会員の収集作業が終わってもいない3日午後3時に声明書を発表した。内容も、6月30日時点で各地方弁護士会に送った公文書に載せられた原文と大した違いがなかった。当初の締め切りを1日以上繰り上げて急いだ理由が釈然としない。
△7月2日、狂牛病国民対策会議はDaumなどのインターネット検閲の問題点を指摘する専門家緊急懇談会を開いた。(写真/ハンギョレ21イ・ジョンチャン記者)
Daumの広告主たちに対する朝・中・東の圧力も予測される。『朝鮮日報』は6月17日付の新聞に「三養食品の‘ナット混入ラーメン’に消費者が怒った」というタイトルの記事を書き、ネチズンたちの集中攻撃に遭った。三養ラーメンは、Daumアゴラで集中的な支援を受けている状況だった。朝・中・東の社会的影響力を恐れる企業が、自発的にDaumのオンライン広告を出さない雰囲気を醸成することもできるのだ。このような負担が重なり続けた場合、Daumの将来は茨の道だ。
だが正反対の可能性もある。朝・中・東の全方位的圧迫に対してもダウム・コミュニケーションの影響力や売上額、株価に大きな影響がない場合、朝・中・東にブーメランとなって戻ってくるからだ。権力集団に対する朝・中・東の影響力は大きいかもしれないが、社会全体に対する影響力はそれほど減少したということを意味するためだ。
一つの例として、長期的な企業価値に対する現在の評価である株式の変動は、Daumに好意的だ。ダウム・コミュニケーションの株価は7月4日正午に前日よりも2000ウォン(+3.17%)上昇した6万5000ウォンを記録した。NAVER(NHN)は1万2100ウォン(-6.88%)下落した16万3900ウォンを示した。Daumは朝・中・東の攻撃にもかかわらず、2日目の上昇気運を見せたが、NAVERはその反対だった。
『朝鮮日報』のインターネット部門である『デジタル朝鮮』も、同じ時刻に前日よりも25ウォン(-1.25%)下がった1975ウォンを記録した。株価は嘘をつかない。
(『ハンギョレ21』2008年07月07日 第718号)