韓国にも歴史教科書問題がある

[済州4・3事件60周年]
ニューライト教科書の反乱

済州4・3事件を‘左派勢力の反乱’と規定した『代案教科書』出版

▣イム・ジソン記者

ニューライト系列の教科書フォーラムが出版した『代案教科書　韓国近・現代史』（以下、代案教科書）が済州を怒りに燃えたぎらせている。済州4・3事件を‘左派勢力の反乱’と規定したためだ。

『代案教科書』は144～145ページで済州4・3事件を‘左派勢力の反乱’と規定した。「南労党（南朝鮮労働党）を中心とした左派政治勢力が大韓民国の成立に抵抗し、彼らが1948年4月3日に済州島で武装反乱を起こした」というのが主な内容だ。また、この事件は「金日成の‘国土完整論’（南朝鮮を米国支配から解放し、国土を完整するという理論）路線に従って起こしたこと」であり、「このような武装反乱と、社会各層に広く浸透した左派政治勢力に対処するために国家保安法を制定した」と説明している。

「時代遅れの‘4・3事件暴動論’がそのまま復古」

これに対して4・3研究所は、「今まで多くの資料分析があるが、金日成はもちろん、南労党中央部がこの済州4・3事件に介入した根拠さえ提示されていない」とし、「大韓民国政府が樹立してもいない時期に起こった事件が‘反乱’ならば、それは誰を対象にした‘反乱’なのか」と問いただした。

歴史的視点の混沌も指摘された。山間地帯焦土化作戦は政府樹立以降に敢行されたもので、当時の軍統帥権者である李承晩（イ・スンマン）大統領に一次的な責任があるが、『代案教科書』がもっぱら米軍政庁のみ言及したことについて、4・3研究所は「ニューライトが大韓民国の建国者・守護者として美化する李承晩大統領に傷を残すまいとする意図」だと評価した。また、「北朝鮮政権が成立する前に起きた済州4・3事件が、どうやって金日成政権樹立以降に出された‘国土完整論’の路線に従ったというのか、理解できない」と指摘した。

これについて『代案教科書』の責任編集を担った李栄薫（イ・ヨンフン）教授は、『ハンギョレ21』との電話インタビューで「済州4・3事件を南労党が主導したということは、資料がすべてあるが、それを一々言うことはできない」、「私は経済史専門家で、専攻者ではないので、詳しい部分については言う立場にない」と話した。また、「済州4・3研究会が出した説明書は読んでみたが、まだそれについて具体的な意見はない」と言った。教科書編集者12人のうち、歴史専攻者が1人もいないという指摘については「歴史というものが別途にあるのか、そのようなことを言うんじゃない」と答えた。ただし「これから議論され、批判があれば変えていくので待ってくれ」と付け加えた。

4・3研究所のパク・チャンシク所長は、「保守右翼勢力が政権交代期に乗じて時代遅れの‘4・3事件暴動論’をそのまま利用し、特別法が制定されて大統領が公式謝罪までした済州4・3事件を歪曲している」と非難した。彼は「『代案教科書』を廃棄し、4・3の英霊の前で謝罪しなければ、済州島民と4・3遺族の激しい抵抗に直面するだろう」と語った。

各政党の非難声明も相次ぐなか、声明を出さないハンナラ党済州島支部のスポークスマンでさえ「教科書の内容が一方に偏っている。真相究明が進められている事件を、専門家もいない状態で理念のみを杓子定規に裁断したもの」だと伝えた。


「代案教科書を阻止せよ」ネットでも激論

憤怒はインターネットを通じて済州を越えた。ネチズンたちはポータルサイトDaumのアゴラ掲示板に「ニューライト代案教科書を阻止してください」というタイトルの請願をアップした。1万人の署名を目標に3月25日に掲示されたこの請願書には、1日で4000人を超える人々が参加した。同じ日に「ニューライト教科書を正式教科書に」という請願もあげられたが、200人余りが署名したに過ぎない。済州のある市民団体活動家は、「これから済州地域の団体が『代案教科書』事件を争点化していき、そのうち遺族たちも問題提起をするだろう」と伝えた。60年の歳月が過ぎた4・3は、依然として血塗られている。

『ハンギョレ21』2008年04月03日 第704号