1980年の
光州事件を題材に扱った韓国映画、『光州5.18』(原題『화려한 휴가 / 華麗なる休暇』。なんでこんなタイトルなのかというと、当時の韓国軍内での作戦名だったから。)が5月から日本でも公開されています(
上映館情報)。韓国では去年の7月に公開され、重いテーマであるにも関わらず、歴代8位の観客動員数を記録しました。
この映画では、ごく平凡な光州市民たちがこの事件に巻き込まれ、“暴徒”と呼ばれて軍から弾圧されるまでの過程が描かれています。当初、登場人物のほとんどは学生デモを遠くから眺めていただけでした。主人公も、好きな人にどうやって告白するかでいろいろ悩んだり、作戦を練ったりしている、どこにでもいそうな普通の青年。前半部分の政治とは無関係でのどかな日常生活のシーンは、中盤からの悲惨な場面との対比を際立たせています。
韓国軍は光州の人々を“暴徒”として扱い、警棒を振り下ろし、銃口を向け、そして発砲します。しかし、その韓国軍兵士たち一人一人の表情は若く、ついこの前までは学生だったり、労働者だったりして日常の市民生活を送っていたような青年ばかり。軍隊は決して国民を守るためにあるのではないということがよく分かります。
この映画の日本公開に関する特派員レポートが5月11日のハンギョレに載っていました。それではどうぞ。
『光州5・18』に感動した日本人
東京で公開後、好評相次ぐ-興行成績は未知数
10日午後1時、東京新宿の映画館、新宿ガーデンシネマ。韓国映画『光州5.18』(原題『華麗なる休暇』)の日本公開初日の初回を観てきたばかりの60代の夫婦、西村マサアキ、サチコ夫妻*の表情には、映画の残像があらわれていた。昨年7月に韓国で公開され、数多くの韓国人の心を揺さぶったこの映画(観客動員740万人、歴代韓国映画の興行成績8位)が、日本人にはどのような反応をもたらすだろうか?
マサアキさんは「何よりも命をかけて民主化のために軍事政権と真っ向から戦った民衆の力を感じました。これは日本ではなかったことです」と語った。夫人のサチコさんは「当時は暴動と言われていましたが、彼らは自分たちを守るために立ち上がったのだということが分かりました。『光州5・18』を本で読みましたが、本の内容がそのまま描かれています」と話した。彼女は1989年以降、夫と共に何度も韓国を訪問し、光州にも立ち寄って同時の状況を体感したり、従軍慰安婦被害者の女性たちの水曜デモに参加した。
戦争放棄を規定した憲法9条を守る運動に参加しているというマサアキさんは、「ヨン様ファンのおばさんたちも、この映画を観て欲しいですね。映画を観れば、韓国の現代史をより深く理解できるでしょう」と話した。西村夫妻のように韓国の民主化運動に関心を持っている日本人の間では、この映画を観る約束をするなど『光州5・18』が静かなブームになっている。
『東京新聞』と『朝日新聞』は、それぞれ9日、10日の文化面のトップ記事で大きく報じるなど、日本メディアも比較的高い関心を示した。先月22日、国会議員試写会に参加した加藤紘一・元自民党幹事長は、「大義を重要視する韓国人の国民性に強い感銘を受けた。当時の光州事件を誤解している人はもちろん、この事件を知らない若い人たちにも観て欲しい」**と映画を観ることを勧めた。
しかし、韓国で1000万人以上の観客動員数を記録した映画『グエムル-漢江の怪物-』が日本の評壇で高い評価を受けたものの、観客たちからはそっぽを向かれたように、同じ轍を踏むのではないかという予想もある。上映館ガーデンシネマの支配人、石田孝文さんは、「初日の初回で300席の客席の半分が埋まった。その半分はイ・ジュンギ***ファンのおばさんたちだ」と話した。民衆たちが権力に向かって銃を構えるシーンなど日本では考えにくいうえに、映画の中で十分な説明もなく、単刀直入にストーリーが展開している。韓国現代史に対する理解のない一般の観客が、容易に接することは難しいだろうというのが彼の説明だ。東京/キム・ドヒョン特派員
*韓国語の記事ではお二人の名前の漢字表記がわからないのでカタカナで表記しました。
**加藤紘一さんのコメントはもっともなことなんですが、当時の報道でどれだけのことが正しく伝えられていたのでしょうか。この映画の
公式サイトで、当時の朝日新聞と読売新聞の記事を読むことができます。
***『王の男』や『フライ・ダディ』、『初雪の恋 ヴァージン・スノー』などに出ていた切れ長の若いお兄ちゃんですね。ふう~ん、日本ではやはりオバチャンたちに人気なのか。この映画では、ちょっと生意気だけど、兄思いで正義感の強い高校生を演じています。配給会社はこのへんをピックアップして宣伝するのもテなのではないかな。でもこの日本版のポスター(→)の文句、ネタバレすぎだよ・・・。そうだよ。イ・ジュンギは軍に撃たれて死んじゃうんだよ。うえええ~ん。