やれんねぇ
2004年06月25日
アンニョンハシムニカ?
久しぶりに韓国から話題をお届けしますが、今回はどうも
いつものような「おちゃらけモード」ではお送りできません。
日本でも報道されている通り、イラクで武装グループに拉致されていた韓国人男性、
金鮮一(キム・ソニル)氏(33)が殺害されました。
このニュースをうけて韓国は、いま重苦しい空気に包まれています。
ただ、日本での報道のされかたに、ちょっと「ん?」と思う部分があるので、これか
らハムニダなりに補足説明いたします。
韓国は日本と同様、アメリカと軍事同盟を結んでおり、
アメリカの“子分”であるという共通点があるわけですが、
違う点といえば、
*朝鮮戦争ではアカから守ってもらったという“ご恩”、
*ベトナム戦争では、一緒に戦ったという“実績”、
*日本国憲法第九条のような“安全弁”がないこと、
などがあげられます。
だから、国民のあいだでも(アメリカに対して)イラク戦争に反対する意見は多かっ
たものの、(韓国政府に対して)イラク“派兵”に反対する意見はそこまで多くな
かったように思います。
要するに
イラク戦争反対>イラク派兵反対
日本よりも「しかたがないモード」が強いなと、私の目には映りました。
こんな状況の下で、日本の自衛隊よりも多くの韓国軍がイラクに派遣されていまし
た。
しかし、フセインはみつかったけど大義(大量破壊兵器)はみつからない、テロ・グ
ループとの関与もないみたい、イラク国民の支持は得られない、民主化も当然すすま
ない、挙句の果てが捕虜虐待、いろんなことが明らかになるにつれ、韓国内でも“厭
戦気運”が少しずつ高まってきていました。
しかし、ですね、先月、アメリカの“民間人”ニック・バーグ氏がイラクの武装グ
ループに斬首され、その残虐な映像がインターネットに流れたあたりから、韓国での
そんな“気運”にも再び変化がおとずれました。
(*先々月、イラクのファルージャでアメリカ民間人4人が惨殺されて、その死体が
吊るされるという事件がありましたが、あれは出来すぎた“統制報道”です。彼らは
正しくは民間“軍事”企業の社員で、元特殊部隊の兵士です。わかりやすく説明する
と、国内の世論や予算の関係で、正規の軍隊ではやってられない部分を民間“軍事”
企業にアウトソーシングしただけで、彼らの任務は軍人とほぼ同じです。それにして
も、何故あの場所に、カメラだけがちゃんと回っていたのか、個人的には不思議に思
います。)
高速インターネットが世界一普及している韓国では、ニック・バーグ氏の惨殺映像が
ネット上にかけめぐりました。(私も目にしました)
そのあたりから、それまでイラクに同情的になりかかっていた“気運”が、徐々に反
アラブ的になったように感じました。
そして、今回の事件です。
金氏が武装グループに拉致されたとのニュースが入り、さらに金氏自身が「私は死に
たくない!」と訴えるビデオもながされました。
各地で韓国軍の撤収や、金氏救出をもとめるデモなどが行われ、ネット上にも、金氏
の生還を祈る書き込みがたくさんあふれました。
でも、この時点で個人的にはかなり悲観的な予感がしていました。
なぜなら、日本人の人質事件とはかなり違う点があったからです。
日本人人質事件の場合
*犯行グループは72時間以内の自衛隊撤退を要求
*その後、宗教指導者との交渉にも応じた
*被害者はボランティア、フリージャーナリストなどイラク側の人間だった
*犯行グループはテロ集団というよりは、素人っぽかった
今回の金氏の場合
*犯行グループは24時間以内の韓国軍撤収を要求
*交渉に応じる気配がない
*金氏は米軍に商品を卸している貿易会社に勤務していた
*送られてきた映像が、ニック・バーグ氏の事件と類似していた
いくらなんでも、24時間以内の撤退は無理だろう、犯行グループもそれを知っていて
要求しているのでは?と思ったわけです。
そして今朝、最悪のニュースが流れました。
犯行グループはニック・バーグ氏を斬首した実行犯と同じと見られています。
テレビには嘆き悲しむ金氏の家族の映像が何度もながされました。
しかし、ここで疑問点がいくつもわいて出てきました。
どうやら、金氏が拉致されたのは、昨日今日の事ではなく、何日も前であったらしい
のです。
当初は拉致された日が6月17日とか、15日とかと言われていましたが、ここにきて実
は5月31日だったという話も出てきました。しかも、拉致のニュースが流れた時点
で、すでに金氏は殺されていたのでは?という疑惑付きです。
これは一体、どういうことでしょうか?
今時点では、様々な情報が交錯しており、混乱しています。
それに、今は遺族の心情を第一に慮るべきでしょう。
しかし、アメリカ側が6月17日ごろには金氏が拉致された事実を把握していたのに、
これを韓国政府に知らせず、カナ貿易(金氏が所属していた企業)の社長にのみ通知
した、というのは事実のようです。
そしてカナ貿易の社長は、交渉を仲介していたアラブ人弁護士の助言により、犯行グ
ループを刺激しないように韓国大使館には通報しなかったと主張しているそうです。
しかし、しかしですよ、ここから日付に注目してください。
韓国政府がイラクへの追加派兵を決定したのは、6月18日です。
その時点で、韓国政府は金氏が拉致されている事を知らされていなかったわけです。
(これは、日本で年金改革法案が強行採決された後に、出生率低下のデータが発表さ
れたのと似ていますね)
アメリカは韓国の追加派兵が決定されるのを待って、韓国政府に知らせたのではない
か?と、韓国のネティズンたちは疑いはじめました。
いや、その疑惑は現在進行形で拡大し続けています。
おそらく、米軍に商品を卸しているカナ貿易の社長(ここでは米軍がお客様、カナ貿
易の社長は弱い立場にあります)個人に責任をおしつけて、事件があいまいにされて
しまうような感じがします。
まるで、日本人大使2人がイラクで殺されたのに、日本政府はアメリカに言われたこ
とを鵜呑みにして、あいまいに事件を幕引いたように。
あぁ、ネット上の情報と同様に私の頭の中も混乱してきました。
しかし、明らかにイラク情勢は泥沼化の様相を呈しています。
そんな場所に、ろくな議論も説明もなしに自衛隊を派遣していいんでしょうか。
日本には、韓国のような“ご恩”も“実績”もありません。
しかも、どこをどう頑張って無理やり拡大解釈しても、多国籍軍への参加は日本国憲
法第九条に違反すると思うんですが。
改正の手続きをとらずして、勝手に既成事実を積み重ねていくというのは、あまりに
も危険なんではないでしょうか。
薫