コメント欄で「日本を批判してばかりで、韓国を持ち上げるなんて、
キイキイ」という匿名さんからのご指摘があったからというわけではありませんが、韓国の独裁政権時代の反省を促すハンギョレ新聞(1月31日)の社説を翻訳してみました。
以前の
死刑廃止リレーエントリーでも少し触れましたが、朴正煕の独裁政権時代は一般犯罪者のみならず、政治犯もがんがん死刑にしていました。そしてその政治犯として死刑が執行された人(まだごく一部)に対して、
再審裁判で無罪判決が言い渡されました。
まだまだ過去の負の遺産を数多く抱えている韓国社会ですが、清算のための努力は続けているようです。
裁判所が率先すべき
朴正煕政権時代に緊急措置を根拠にした裁判所の判決を分析し、昨日、真実和解委員会が報告書を出した。不当な公権力を行使したことによって生じた人権侵害事件を明らかにし、再びこのようなことが起こらないようにしようという努力の現われだ。裁判官の名前を明らかにすることをめぐって激しい論争が行われたが、公開するのは当然のことである。裁判官は一人一人がすべて国家機関なのだ。判決文に出ていた名前をすべて除いたのであれば、それがまた卑怯ということになっただろう。当時の行動が公正だと主張していながら、名前は明らかにするなというのは辻褄が合わない話だ。
今回の件をめぐって激しい論争があったのは、まだ韓国社会の公職倫理が確固としていないことの傍証だとも言える。「緊急措置は維新憲法を基にした実定法の地位を持っていたため、法官がそれに従って判決を下したことを問題視してはならない」という主張は、国民が法官に求めている倫理意識とは大きな隔たりがある。人権の最後の砦でなければならない法官が無辜の人々に苦痛を与える判決を下したことは、どのような論理をもってしても正当化することはできない。そのようなことが再びあってはならないが、万が一そのような状況に再び置かれれば法官たちはどのような行動をとらなければならないのか、確固とした規範を打ち立てる契機としなければならない。政治権力から司法部の独立を守るためにも必要なことだ。
判決に参与したからといって、すべての法官に同じ道徳的責任を問うことは難しい。同席しただけの場合もあるだろうし、無理な適用を避けようと密かに努力した場合もあるだろう。このような事情は十分に酌量しなければならない。本当の和解に至れば、該当する法官たちがまず先頭に立って被害者たちに心から謝罪をし、許しを請うべきだ。無理な論理で正当化しようとすれば、むしろより大きな反発を招くだろう。
裁判所がすべきことも多い。今現在の裁判所に対する国民の不信感は、大革新が必要なほどに大きい。最初のボタンのかけ間違いは過去の過ちを正すことからやり直さなければならない。今回の調査結果について最高裁判所が「司法部の過去を反芻する契機にする」と明らかにしたのは最初の一歩を踏み出したことになる。しかし他の部門における現代史の整理と比べれば、裁判所の速度はあまりに遅い。今回の報告書発行も事実、裁判所がしなければならないことを真実和解委員会が代わりにしたという指摘を肝に銘じなければならない。現代史の整理やこれに必要な後続の措置を急ぎ、法官の疎明意識や倫理意識を高めることを裁判所が率先すべきだ。
*資料
韓国の死刑制度はどうなっているんだろう?