国連事務総長に就任した潘基文氏が、昨年末にあわただしく執行されたイラクのフセイン元大統領の死刑に対して「各国が決めることだ」などと死刑を擁護するともとられかねない発言をしたことが、韓国内でも反発を招いています。
潘基文事務総長はその後、
軌道修正を図っているようですが、今日のハンギョレ新聞にはこんな
一コマ漫画や、こんな社説が掲載されてしまいました。

死刑制度反対 -国連-
潘基文国連事務総長
フセイン処刑擁護発言
(ブッシュ)ナイス!
死刑存置国出身の国連事務総長の限界
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が就任直後から大きな論争を引き起こした。サダム・フセイン元イラク大統領の死刑執行に対する質問に、「フセインはイラクの人たちに対する凶悪な犯罪の責任があり、われわれはこのような犯罪の犠牲者たちを忘れてはならない」「死刑は各国が法に従って定める問題」だと答え、死刑制度を擁護する意味の発言をしたからだ。
世界の主要メディアや人権団体は、潘総長の発言が人権に基づいて死刑に反対してきた国連の基本方針に反するものであり、手続き上の欠陥も多いと批判されたフセイン処刑の正当性を裏付けるものであると認識されかねないと憂慮した。初の韓国出身の国連事務総長に大きな期待をかけるわれわれとしては、彼が就任早々から論争に巻き込まれた点は遺憾に思わざるをえない。しかし、多くの難題を抱えた世界に向かって発言しなければならない国連事務総長は、“火の洗礼”を通過するしかない。そのような点で潘総長が今回の論争から教訓を得て、これからは自らの職責をちゃんと果たしていくことを期待する。
潘総長発言の問題点はいくつか指摘することができる。まず中立的見地から平和を増進させる職責にある国連事務総長として、フセインの死刑執行以降、宗派間の葛藤の高まりにより内戦状態に向かっているイラクの現実を十分に考慮しなかったという点だ。一部ではアメリカさえフセインの死刑と距離を置こうとしている状況での彼の発言は、かねてから懸念されてきた彼の親米的な性向に対する憂慮を呼び起こしたという指摘もある。さらに重要な点は、国連が人権の最後の砦であるということを、彼がまともに認識できなかったように見えるということだ。国連は反人道的犯罪者・虐殺者・戦犯も死刑にしてはならないというのが公式な見解だ。また、192の国連加盟国のうち、死刑制度を存置している国は韓国、アメリカなど70カ国に過ぎない。
これに関連して潘総長の発言は、死刑制度を存置している韓国の外交責任者だったせいではないかという指摘を受けることになるだろう。韓国も9年間死刑を執行せず、死刑廃止国の目前にいるが、政府は廃止の決断を下せずにいる。しかし人道的側面から見れば死刑制度と犯罪率の相関関係を立証することはできず、死刑を維持しなければならない理由はない。死刑反対を公式な方針としている国連の長を輩出した国らしく、韓国も死刑制度廃止を積極的に推進しなければならない時だ。
2006年12月31日の毎日新聞によると、「国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは(1)公正さと中立性の欠如(2)イラク政府の干渉(3)関係者の安全確保の不十分さ(4)被告、弁護団の権利侵害--などを指摘し、「裁判には深刻な欠陥がある」と批判。国連人権高等弁務官も「公正さを懸念する」との理由からイラク当局に慎重な対応を求めていた。」とのことです。
フセイン元大統領の死刑執行と自国の死刑制度廃止とを関連づけるのはハンギョレ新聞の力技だと思いますが、この文章の端々には未だに死刑存置国であることの敗北感や劣等感がにじみ出ていますね。これを機会に韓国はまた死刑廃止に一歩近づくかもしれません。