今回の北朝鮮の核実験に対する韓国メディアの論調がどうなっているのか気になるところです。とりあえず今日(10/10)のハンギョレ新聞の社説を訳してみました。他の保守系新聞は日本語版があるので、それでご容赦ねがいます。それではどうぞ。
北朝鮮の核実験は過った判断
北朝鮮が昨日、核実験を行ったと発表した。今月3日に核実験の計画を明らかにして6日後のことだ。それまで6カ国協議の参加国である韓国、アメリカ、中国、日本、ロシアはもちろん、国連安保理も議長声明を通じて核実験計画の放棄を求めてきたが、北朝鮮はこれらすべての警告を無視した。国際社会の要求に耳を閉ざし、自らの日程表に従って動いたのだ。今回の核実験は昨年の9.19共同声明や、1991年に南北が合意した朝鮮半島非核化共同宣言にも反する。北朝鮮はこの挑発行為に対して、あらゆる責任を負わなければならない。
北朝鮮は核実験によって核保有国になったことを認められ、アメリカとの交渉でより良い位置に立つことができると判断したようだ。また、アメリカが北朝鮮に対する敵視政策の一つとして金融制裁を強化すると見て、「行くところまで行ってしまえ」と思ったのかもしれない。すべてが間違った判断だ。アメリカが北朝鮮を核保有国として認め、対北政策を大きく変えるという仮定も非現実的であり、核実験は国際的孤立を深め、北朝鮮経済にも大きな負担をもたらすからだ。国連による対北制裁圧力が強まることも、避けることはできないだろう。国内の結束が主な目的だとしても、核実験を選んだことは北朝鮮指導部の深刻な判断力の欠落を示している。
今回の核実験の波紋は、見定めることさえも簡単ではない。急速に朝鮮半島をはじめとした東北アジア地域の緊張が高まるだろう。北朝鮮は防御用・自衛用に核兵器を保有すると主張しているが、周辺諸国はこれを脅威と認識するだろう。朝鮮半島の非核化宣言が破られ、中長期的には東北アジア地域で核開発を含む軍拡競争をもたらしかねない。世界が憂慮するのは核拡散禁止条約(NPT)体制の弱体化、あるいは崩壊だ。核を含む大量破壊兵器の拡散は21世紀における地球村の安保の最大脅威である要因だ。今回の核実験は北朝鮮をそのような脅威の主体としてより具体化する契機として適用するだろう。
朝鮮半島危機の始まりなのか
今回の核実験が新しい朝鮮半島危機に至る可能性もないわけではない。1990年代初頭の第1次北朝鮮核危機は、北朝鮮が国際原子力機構の査察を拒否し、核拡散禁止条約脱退を宣言したことから始まった。当時のアメリカ政府は北朝鮮の核施設に対するピンポイント爆撃計画を検討していた。戦争勃発直前の状況にまで達していたのだ。2002年の秋に北朝鮮の高濃縮ウランの核計画をめぐって始まった第2次核危機のときも、アメリカでは北朝鮮の核施設攻撃論が沸きあがった。今回もアメリカ国内の強硬派が似たような主張をしないとも限らない。北朝鮮に対する国際世論も過去のいずれのときよりも良くない状況だ。これまで北朝鮮側についていた中国でさえ、7月の北朝鮮によるミサイル発射以降は中立的な態度に変わっている。
危機の拡散は我々にとって最悪の悪夢だ。したがって、韓国政府がもっとも優先しなければならないことは事態を安定的に管理することだ。まずは挑発的な行動で状況が急激に悪化しないようにしなければならない。各国レベルの拙速な対応よりも、国際社会の叡智を集めて団結した姿を見せつけることが望ましい理由だ。特に第1次、第2次核危機の際と同じように北朝鮮攻撃論がアメリカや日本国内で無責任に論じられないように協調を強めなければならない。
困難なときほど冷静になるべき
難しい状況だからといって、外交的努力を放棄してはならない。北朝鮮の核問題は結局、外交的・平和的な方法で解決するしかない。北朝鮮の間違った判断が事態を悪化させたとしても、北朝鮮はやはり他の国との武力対決を望んでいないことは明らかだ。昨年1年間、北朝鮮が行った一連の挑発的な行為は、総じてアメリカの対北金融制裁解除を狙っている。北朝鮮が求めているアメリカとの直接対話には、やはりアメリカの口から体制保障の確約を得ようという意図が強く見られる。北朝鮮の挑発とアメリカの悪意的な無視が繰り返されている現状を克服するには、アメリカ政府が北朝鮮との直接対話を前向きに検討するように努力しなければならない。6カ国協議はまだ消えたわけではない。先月の米韓首脳会談で基本枠に合意した“共同包括的接近案”も依然として有効だ。
南北関係を全面的に再検討しなければならないという主張も時期尚早だ。もちろん北朝鮮が核実験をした以上、南北関係を過去とまったく同じように進めることは難しい。しかし、南北関係の急激な萎縮は、無条件の民族協調を主張することと同じくらい危険だ。特に南北協調は朝鮮半島で戦争の危険を低下させ、民族の同質性を回復して北朝鮮の変化を引き出すための必須条件だ。断絶しやすいものの、再び構築するには多くの努力が必要なのが南北関係なのだ。
今回の核実験は、この10年余りの間に進められてきた北朝鮮の核問題が一つの頂点に至った。我々がどのように対応するかによって、これからの朝鮮半島の姿が大きく変わりかねない。北朝鮮の行動を予測することは難しく、関係国の利害関係も複雑なだけに多様なシナリオに備える必要があるが、性急な対応は禁物だ。政治の世界でこの問題を戦争の道具にすることも望ましい姿ではない。過去のどの時期よりも冷静で現実的な態度が、我々全員に必要な状況だ。