好評にお応えしまして、ハンギョレ新聞が安倍晋三特集をしている第三弾です。
今回のは、安倍晋三が北朝鮮バッシングを利用していかにのし上がってきたかという記事ですね。でもこの特集を担当しているパク・ジュンオン記者、どうも先日行った
小川和久氏へのインタビューの影響を強く受けているようです。それとも次期(?)安倍政権に対する憂慮のあまり、小泉政権が少しマトモに見えちゃってるのでしょうか。あぁ、ちょっと心配。
以下は8月20日に掲載された記事です。それではどうぞ。
「金正日の謝罪」で総理を圧迫、一躍スターに
2002年、日朝首脳会談で強硬論主導
一貫した北朝鮮バッシングで政治的地盤を強固に
対北圧力の影には“穏健化”の余地も
[ポスト小泉の安倍を集中研究]
2002年9月17日昼、歴史的な日朝首脳会談が開かれた平壌百花園迎賓館の会談会場の隣室。北朝鮮側から拉致被害者8人の死亡の知らせを聞いた日本代表団の表情は沈痛だった。安倍晋三官房副長官(当時)は、「総書記の謝罪と説明がなければ共同宣言への署名は再考しなければならない」と声を荒げた。40分近く沈黙を守った小泉純一郎首相は午後、会談で金正日国防委員長の謝罪を引き出した。会談の内容が詳細に伝えられると、日本列島は激烈な“対北ヒステリー”に覆われた。若手議員の安倍が総理総裁候補として急浮上した瞬間だった。
先月5日の北朝鮮のミサイル発射直後、安倍はただちに9項目にわたる対北制裁を断行した。経済制裁と武力行使を可能にする国連安保理制裁決議案に追い込むように終盤まで促し続けた。中国の拒否権行使の警告に目もくれない超強硬な姿勢に対する憂慮が相次いだが、彼は微動だにしなかった。安倍の支持率は上昇曲線を描き、強力な競争相手だった福田康夫元官房長官は出馬を取りやめた。日本版“北風”により、安倍は次期総裁の地盤を固めた。
現在の安倍を築いた一番の功労者は北朝鮮だということに対する異論はほとんどない。安倍は一貫して“北朝鮮バッシング”で政治的立場を固めてきた。対北強硬世論は、彼の最大の政治的資産だ。そのため、彼に画期的な対北政策転換を期待するのは困難だ。彼が政治的難関に行き着くたびに対北圧迫カードを乱用する憂慮も少なくない。
1988年に拉致問題に初めて接した安倍は、93年に議員バッジを着けた直後からこの問題に入り込んだ。社会党連立政府発足以後、対北コメ支援論議が盛んだったその時期、彼は“拉致被害者救出”をわびしく叫んだ。拉致問題の効用性に早くから目をつけたことは、彼の人並み外れた政治的資質だと言えるだろう*。97年に拉致議員連盟を結成し、被害者家族と緊密に接触する過程で「拉致は北朝鮮の国家犯罪であり、最優先解決課題」だという認識が彼の頭の中で確固としたものになった。
安倍の対北基調は“対話と圧力”であり、圧力はそれ自体が目的ではなく、北朝鮮の政策変化を引き出すための手段だと話している。彼の対北認識も現実的だ。「金正日国防委員長は合理的判断が可能な人」であり「北朝鮮がミサイル攻撃をしてくる可能性は低い」という発言が代表的である**。それでも安倍は“制裁無用論”を一蹴して“北朝鮮の締め付け”にのみ没頭してきた。彼は「制裁が決定打ではなくても北朝鮮の化学変化を引き出す可能性は充分」だと主張している。彼は北朝鮮の崩壊に対する期待を公然と言及したこともある。伊豆見元静岡県立大教授(国際関係)は、「安倍長官は“リビア・モデル”に強い関心を示している」と言及した。リビア・モデルは大量破壊兵器をまず放棄し、その後に補償を与える方式だ。
対北関係改善の意志がはっきりしなかった小泉純一郎首相の“空白”も大きいように思える。専門家は小泉が寄与した点は△二度にもおよぶ訪朝を断行するほど日朝対話に主導権を行使した、△北朝鮮のミサイル発射以降も慎重な対応を注文するなど制裁雰囲気の拡散にブレーキをかけてきた、△ジョージ・ブッシュ大統領に米朝直接対話を求めたことなどをあげた***。安倍にこのような役割を期待するのは困難だ。さらに田中均外務審議官を筆頭にした日本の対北対話派は、すでに駆逐されたか支離滅裂な状態だ。
しかし、安倍が総理になれば、言動や態度はもう少し慎重で均衡が取れた状態になり、北朝鮮に冷徹な接近をするだろうという一部の期待もある。ある専門家は「安倍はやはり外交的業績を残すことを望む政治家」とし、「相手を圧迫しなければ交渉にならないと確信する偏った“ゲーマー”だが、北朝鮮とのゲームがどのように進むかによって意外な結果を生み出すかもしれない」と話した。実際に対北制裁発動後、日朝関係はこの上なく冷え切った状態だが、安倍の周辺にいる人々は北朝鮮側と接触チャンネルを維持していることを伝えてきた。
東京/パク・ジュンオン特派員
*「拉致問題の効用性に早くから目をつけた」じゃなくて、「拉致問題の効用性に早くから目をつけた連中が安倍の取り巻きの中にいた」じゃないのか?
**はて?北朝鮮が“ロシア近海に”ミサイルを発射したのを契機に「敵基地攻撃の検討研究必要」(朝日新聞7月10日)とか言っておきながら、後で「先制攻撃とは“誰も”言っていない」などと支離滅裂ぶりを発揮したのは誰だっけ?
***このあたり、パク・ジュンオン記者が小泉のチョウチン持ち、タイコ持ち芸人の小川和久氏にインタビューした痕跡がうかがえます。
小泉政権が5年も続くと、森前政権がまだ“マシ”だったかのような“錯覚”に陥りますが、次の政権でも同じような“現象”が起こることを暗示しているかのようですね。