安倍晋三官房長官の新刊、『美しい国へ』*はそのうちうんこなほんやにも入ってくるだろうから、そこでうんこな立ち読みをしてツッコミでも入れようかと思っていましたが、早くもその新刊を手に入れてツッコミを入れているブロガーがたくさんいらっしゃるようです。(その中でも
華氏451度さんはお金を出して、しかも定価で買われたそうですから、ご愁傷様と言うか、なんと言うか…)
まぁ、かなりツッコミどころ満載な本のようですから、今から予習しておくのもいいかもしれません。韓国の『
OhmyNews』でもこの本と安倍官房長官に関する記事が出ていました。
なんでもこの本では“韓国・中国を一括り”にして無視しているそうで、それに対して韓国人記者はカチンときているようです。まぁ、そんなのは安倍晋三内閣官房長官の平素の(近くの国を見ずに遠くの“美しい国”にひざまずく)言動からすると想定の範囲内でしょう。それではどうぞ。
安倍が「民主国家連帯」から韓国を排除した理由
有力な日本の次期総理、『美しい国へ』発行
日本の次期総理として有力視されている安倍晋三官房長官の著書、『美しい国へ』が先週から日本全域の書店に並べられた。9月20日の自民党総裁選挙を目前にし、各世論調査でダントツの1位になっている政治家の執権構想が書かれた本であるためか、新刊コーナーのもっとも目に付く場所を占有している。
彼はこの本の第5章(日本とアジアそして中国)で、対アジア外交の基本構想を明らかにしている。結論は「普遍的価値観をアジア-太平洋地域の国々と共有するために、日本、オーストラリア、インド、アメリカの4カ国が戦略的連帯をしなければならない」ということだ。彼は日本とオーストラリア、インドを「アジア-オセアニア民主国家」と称し、これにアメリカを加えた「3+1」という構図を提議した。「アジア民主国家連帯」から韓国は除外したかたちだ。
韓国・中国を一括り
彼はまず対中関係について「経済面で両国は離そうにも話せない互恵関係」と前提し、「政治問題のためにこのような互恵関係が損なわれてはならない」と「政経分離の原則」を主張した。
もちろんこれは総理の靖国神社参拝をめぐる両国間の葛藤を意識したものだ。彼は「国が違えば歴史や文化も違う」として「両国間に問題があったとしても、これを全体的な関係に波及させてはならない」という小泉総理の論理を踏襲した。
彼は続けて「このような状況は韓国も同じ」だと韓国を中国と一括りにして扱った。日韓関係については「楽観主義」だとしながらも「過去について謙虚に、礼を尽くして未来志向で行く限り」という前提を掲げ、韓国側の歴史問題提起などについて不快感を遠まわしに表した。
全般的に韓国、中国との政治的葛藤を積極的に解消する意思がないことがこの本からは読み取れる。そうだとすれば、なぜインド、オーストラリアなのか。彼はインドを「親日的な民主国家」、オーストラリアは「今年、閣僚級会談を成功させるパートナー」と称して「自由と民主主義、基本的人権、法の支配という普遍的価値観を日本と共有している」と説明した。アジアの他の国々はこのような普遍的価値観に立脚していない国として見ているとの解釈も可能だ。
右翼政治家の真価
この本のあちこちで“右翼政治家”安倍の所信が正直に表現されている。第二次大戦後、A級戦犯容疑で起訴**されたものの釈放され、後に総理になった彼の母方の祖父、岸信介に関して「祖父が“保守反動の権力化”や“政界の黒幕”と呼ばれたことは知っている」と言及したうえで「その反発から“保守”という言葉にむしろ親近感を持つようになった」と吐露した。
彼は“保守主義”について「現在と未来はもちろん、過去に生きた人々に対しても責任をとること」と提議した。「100年、1000年、日本の長い歴史の中で生成された伝統がなぜ守られてきたのかについて常に賢明な認識を持ち続けること」が“保守の精神”だということだ。
彼は“A級戦犯”の子孫らしく、靖国神社問題の本質であるA級戦犯の合祀についても終始一貫して擁護してきた。さらにA級戦犯の存在自体を否定する詭弁を展開している。
「A級戦犯についても誤解がある。A級戦犯とは極東国際軍事裁判で“平和に対する罪”と“人道に対する罪”という、戦争が終わった後に作られた概念により審判を受けた人々を言う。国際法上、事後法による裁判は無効という論議もあるが、それとは別に指導的立場にいたためにA級戦犯と便宜的に呼ばれただけで、罪の軽重とは関係がない」***
彼の詭弁は続く。
「A級戦犯の判決を受け入れたものの、後に赦免されて国会議員になった人もいる。その一人である重光葵は日本が国連に加盟した当時、外務大臣として勲一等が叙勲された。国連で重光はなぜ糾弾されなかったのか。なぜ日本政府は勲一等を剥奪しなかったのか。それは国内法で彼らを犯罪者として扱わないと国民の総意で決定したからだ」***
次期総理として確実視
安倍長官が実際に総理になった場合、歴史問題や靖国問題などをめぐって日韓、日中関係がどれほど揺れ動くのかが推測される。このような認識であれば、小泉総理の靖国参拝により悪化した現在の状況が改善される余地はほとんなないように見える。
彼は靖国問題が今回の自民党総裁選挙の争点になる兆候が見えると、▲この問題を選挙では争点化せず、▲参拝をどうするか明らかにせず、▲8月15日の参拝に固執しないという方針を伝えたと『朝日新聞』が報道した。
安倍長官は現在、各種の世論調査で50%に迫る支持率で独走している。有力な競争相手と見られていた福田康夫前官房長官が出馬を取りやめ、他の候補者たちは一桁の支持率に甘んじているため、次期総理としてほぼ確実視されている。
*ちなみに
某ブログでも書かれていましたが、中国語や韓国語ではアメリカのことを“米国”ではなく“美国”、つまり“美しい国”と表記します。
**この記事では「起訴」と書かれていますが、岸信介はA級戦犯としては不起訴になっています。記者の事実誤認と思われるので、先ほどこの記者にメールで「起訴」ではなく「拘束」と書くべきではないのかという主旨のメールを送りました。(7/31に「ご指摘ありがとうございました」と日本語で返事がきました)
***引用部分は もともと日本語で書かれた本→韓国人記者が韓国語訳→それをまた私が日本語訳しているので、原文とはおそらく違うでしょうが、それにしてもこの部分はツッコミどころ満載です。この韓国人記者にも“詭弁”と書くだけでなく、具体的にどこがどう詭弁なのかツッコんでほしいところですね。(ってか、私がツッコミ入れろってか?)