Daumの次はどこへ?
『ハンギョレ21』[2009.07.24第770号]
[特集]「左右のバランス」をとるために『プレシアン』、『ビュース・アンド・ニュース』を排除し、アゴラViewのインターフェイスを使いにくくするなど、氾濫する外部圧力に苦肉の策
▣イ・テヒ
»Daumの次はどこへ?写真『ハンギョレ21』キム・ジョンヒョ記者
7月1日、インターネット・ポータル、DaumのメディアDaumから2つのメディアが消えた。進歩的なネットメディアとしてあげられる『プレシアン』と『ビュース・アンド・ニュース』だ。翌日2日、『朝鮮ドットコム』には「Daum、ニュースサービスから『プレシアン』の記事を除外」という記事が出た。『朝鮮ドットコム』は、Daumが「1日からニュースサービスであるメディアDaumに『プレシアン』で作ったコンテンツをあげていない」と明らかにしたと報道した。
『プレシアン』が抜けた日、『ハンギョレ21』の記者と会ったDaumのある高位関係者は、「少なくない政治的圧力があった」と断言した。その翌日の7月3日、『プレシアン』のパク・インギュ代表とDaumのチェ某メディア本部長がソウルのあるレストランで会談した。2人は『京郷新聞』の先輩・後輩の関係で、普段からよく会っている間柄だ。パク・インギュ代表の話だ。
Daum側、「トラフィック寄与度が低い」
「その席で私が「『プレシアン』が抜けたことが政治的圧力のせいなのか?」と聞くと、チェ本部長は「そうではない」と言った。だから「政治的圧力の有無については後で明らかになるはずだから、ニュースコンテンツとして『プレシアン』の弱点があるなら指摘してくれ」と言った。チェ本部長が「『プレシアン』の記者は事実と意見が混在していて、意見の方が強くて負担だ」と言った。また、「去年の8月以降、メディアDaumから朝・中・東が抜けてから『プレシアン』などの進歩的見解を持つメディアに比べ、保守的なメディアが少なく、政治的バランスをとることも容易ではない」と言った」
パク・インギュ代表は「チェ本部長は政治的バランスをとるという趣旨で下された決定だと言ったが、陰に陽に政治的圧力を感じた結果、『プレシアン』を抜いたのだと思う」と付け加えた。
Daum側は政治的圧力説を否認した。メディアDaumを担当しているチェ本部長は、『ハンギョレ21』との電話インタビューで「パク・インギュ代表に会ったときも十分に説明をしたが、他で解析されていることとは違って今回の決定に政治的理由があるわけはない」、「Daumの内部基準に合わせて決定した事案について、政治的な解析が出てくることには納得がいかない」と話した。チョン・ジウン広報チーム長も「メディアDaumと各メディア間のメディア提携方式に対する価値測定の結果、『プレシアン』と『ビュース・アンド・ニュース』のトラフィック寄与度が低いという評価が出たため、契約を解約することになった」と明らかにした。Daumの対外協力本部も「青瓦台や政府が民間企業に対して、特定メディアを排除しろと圧力をかけることはできない」と断言した。
内部事情は違った。Daumのある役員は、「政府・与党側から保守と進歩のバランスをとる必要があるため、メディアDaumに『ニューデイリー』を載せろという要請を受けたことがある」と語った。実際にDaumは『ニューデイリー』を新しいコンテンツ供給メディアとして登録するかを議論し、留保したと伝えられた。現在、メディアDaumに保守的インターーネットメディアとしては『デイリアン』だけが登録されている。あるメディア担当記者は、「『ニューデイリー』は2007年の大統領選挙の過程で『デイリアン』から分かれてできた」「『デイリアン』が「親朴槿恵」的な性格が強くて、『ニューデイリー』は「親李明博」的な性格が強いと見ればいいだろう」と語った。政府・与党から『ニューデイリー』のコンテンツを供給するようにしてくれと要請されたことは「親李系メディア」を支援しようという意図もあると解釈できる。Daumの他の関係者は「政府から持続的にメディアDaumの政治的バランスをとれと圧力的な要請がきていた」、「結局、インターネットメディアでは進歩的メディアとして『オー・マイ・ニュース』、保守的メディアとして『デイリアン』のみを残し、『プレシアン』と『ビュース・アンド・ニュース』を抜くことになった」のだと明らかにした。
»メディアDaumにニュースを供給するメディアの名簿(上)。7月から『プレシアン』と『ビュース・アンド・ニュース』はここから除外された。去年の狂牛病政局で、抵抗的なネチズンの空間となったアゴラ(左下)とview(旧ブロガーニュース)は、政府と与党の集中的な弾圧の対象だ。
「朝・中・東」コンテンツの供給を拒否しながらバランスを
「政治的バランスをとれ」という要求は、常に最近の状況を無視した論理が起きないことがない。メディアDaumに進歩的言論が多く残ることになった理由は、「朝・中・東」がコンテンツ供給を拒否したからだ。『朝鮮日報』を中心に『中央日報』、『東亜日報』、『韓国経済』などは、昨年7月に一斉にDaumとの関係を終わらせた。DaumアゴラとDaumカフェを中心に活動する「言消主」(言論消費者主権国民キャンペーン)が行った朝・中・東の広告主の不買運動が、決定的な契機だった。『朝鮮日報』は昨年9月には「Daumが相当期間、我々の著作物を大量に無断で使用し、損害額が少なくとも90億ウォンにいたる」とし、その一部である10億5700万ウォンを支給しろと損害賠償請求訴訟を起こした。
トラフィックを理由に『デイリアン』は残しておき、『プレシアン』を除くことは現実でも合っていない。『プレシアン』はインターネットポータルであるNaverには「オープンテスト」メディアとして登録されている。Naverは最初の画面のニュース編集権を「オープンテスト」という形式で各メディアに引き渡した。オープンテストに登録されたメディアは、全部で35だ。Daumが残した『デイリアン』は、ここに含まれていない。
Daumの役職員は、昨年の牛肉政局以降、陰に陽に外部的圧力が氾濫していると口をそろえた。Daumのある高位関係者は、「キム・チョルグン青瓦台国民疎通秘書官が、メディアDaumを担当しているチェ某本部長にしょっちゅう電話している」、「青瓦台の電話が活発なコミュニケーションである場合もあるが、圧力として感じるのではないか」と話した。キム・チョルグン秘書官は、2006年から2年間、Daumの副社長として勤務した。チェ本部長は「同じ職場で一緒に働いていた者同士だから、普段から電話で話せるのだ」、「圧力として感じるような電話はなかった」と話した。キム・チョルギュン秘書官も「親しい間柄だから、電話を心置きなく話せるんじゃないんですか?」、「会話の内容は極めて私的な内容」だと話した。
Daumの他の関係者は「昨年の中旬から検察や警察からチェ某メディア本部長にしょっちゅう電話がかかってくる。特定掲示板に対する抗議と遮断要請をしたらしい」、「午前1~2時に電話がかかってきたことも何度もある」と話した。チェ本部長も人に話せない事情に気を病んでいるという説明だ。Daumのある元役員も「警察庁のサイバー捜査隊をはじめ、警察レベルでDaumアゴラを監視する要員だけでも70人を越える時期があったそうだ」、「これらが24時間アゴラにあげられる書き込みを検閲する役割を果たした」と伝えた。これらは警察に対する名誉毀損の疑いがある書き込みを見つけ出す一方、特定の政府部署や与党議員を批判する書き込みがあればこれを当事者に通知する役割を果たしたという証言もある。Daumの関係者は「メディア本部で与党の実勢国会議員室から「警察から連絡があったが、あれこれ問題があるので該当の書き込みをすぐに遮断してくれ」という電話がかかってきたことがある」、「警察でこのようなこともするのかと思った」と漏らした。
»ソウル瑞草洞にあるポータルDaum本社2階のカフェテリアで、あるネチズンがインターネットに没頭している。写真『ハンギョレ21』キム・ジョンヒョ記者
Daum法務チームの関係者は、「最近はDaumカフェにあげられている著作権違反コンテンツや猥褻物に対する警察の押収捜査要請が大幅に増えた」とし、「今月の頭から施行された改正著作権法で強化された処罰条項のため、萎縮する雰囲気があるのも事実」だと語った。7月3日から施行された改正著作権法の核心は、「インターネットの三振即アウト制」だ。映画、ドラマ、音楽などを著作権者の許可なしに大量に流布するインターネット掲示板を、文化体育観光部長官が3回警告した後、最大6ヶ月まで停止させることができるようにした制度だ。
Daumに入社して7年目のある職員は、「Daum内部でも抵抗すべきという人たちと、角が立たないように協力すべきという人たちに分かれている」、「平均年齢が30代前半のDaumの役職員にとって、政府の圧力は大きな負担になるのも事実」だと話した。
Daum関係者は「去年の牛肉政局の中心にあったアゴラ掲示板の露出度を減らすために、メインページ下段にあったメニューを閉じ、批判的正確が強かった「ブロガーニュース」も「View」に名前を変えてインターフェイスも使いにくくした」、「その結果、アゴラの場合、ページビューが15~20%ほど減った」と漏らした。苦肉の策だ。
これだけではない。対外協力チームのある職員は、「盧武鉉前大統領の逝去当時、追慕掲示板に書き込みを残すにはログインをした後でタイトルをつけ、本文を書くようになった」、「当事、ライバルのNaverはログインしなくてもすぐに追慕の書き込みができた」と話した。この職員は「追慕掲示板のトラフィックもいろいろな所で分析し、実際よりも少なくアクセスしたように設計した」、「その結果、Naverの追慕掲示板のトラフィックに比べて5分の1程度しか出なかった」と言った。政治的に敏感な領域のトラフィックは、意図的に減らしたという説明だ。
「ブラインド」制度の不合理性
ポータルDaumに対する外部圧力は、Daumの政治性を殺している。創業者であるイ・ジェウン代表は、「多(다)」と「音(음)」の漢字合成語である「多音」をDaumの名前の由来とした。「いろいろ多様な音」を集めるという意味だ。1995年の創業から14年間、「多様性」を天命として考えてきた企業に、「画一性」を求めることが起こっている。Daumの済州島移転は、多様性を求める性格を表わした。Daumは「ソウルへ、ソウルへ」と叫ぶ主流の流れに逆らい、2004年にメディア本部を中心に、済州島へ移転した。イ・ジェウン代表も、ソク・ジョンフン・メディア本部長(共に当事)も自宅を済州島に移し、済州定着に対する意志を示した。済州市梧登洞にあるDaumの「グローバル・メディア本部」では、200人余りのDaumの職員が働いている。
政府からの外圧の対象になったアゴラとブロガーニュース(現在の名称は「View」)は、TVパットと共にDaumが済州島で作った3大作品だと自評してきた。Daumは現在、カフェやブログ、アゴラ掲示板の書き込みに対して外部から異議や抗議がきた場合、すぐにアクセス制限をしている。「ブラインド」制度と呼ばれるこのアクセス制限措置をされた書き込みは、30日間、内容を見ることができなくなる。著者も同じようなものだ。Daumの法律チーム関係者は「ブラインドとなった書き込みは、書いた人が放送通信委員会から「名誉毀損ではない」と判断された場合、アクセス制限を解除している」、「しかし、放送通信委員会が個人からはこのような要請をされることがほとんどないため、事実上、ブラインドを解除できる方法はない」と話した。この関係者は「書き込みをした人は、遮断されたことに対して不満もあるだろうが、名誉毀損されたと考える当事者も不満があるもの」だとし、「Daumはその均衡点を見つけるために努力している」と話した。
右側に追いやる外部の圧力のせいで、その「均衡点」がむしろ崩れているのではないだろうか。
イ・テヒ記者