盧武鉉大統領と李明博大統領
『メディア・オヌル』[大統領と民主主義]
14.時局宣言から顔をそむける明博
2009年07月13日(月)16:45:16 コ・スンウ論説室長
盧武鉉大統領の49日が終わった。しかし、彼の悲劇的な死の原因となった執権層の傲慢ぶりや独善は相変わらずだ。青瓦台、ハンナラ党はマイウェイばかりを歌っている。市庁前の広場には相変わらず警察が常駐し、南北関係の危機指数は上昇しつづけている。青瓦台を始発点とする不通の壁は高くなるばかりだ。盧前大統領が社会に投げかけた衝撃と教訓は、火種としてまだ残っているのか、それとも梅雨時の洪水で流されてしまうのか?
現政権が時局宣言
*をした教師たちを一斉に懲戒したことは、青瓦台の本音が何なのかをあらわにした。それは市民社会に対する宣戦布告だ。つまり、ロウソクや時局宣言は現政府とは関係なく、公安秩序は人権よりも優先し、南北関係についてはアメリカや日本べったりの共助によって北朝鮮を屈服させることが目標だということを現政権が強調しているのだ。
▲盧武鉉前大統領の49日の法要が行われた今月10日午後、ボンハ村に盧前大統領の大型の肖像がかけられていた。ⓒイ・チヨル記者
ボンハ村のミミズク岩の悲劇は、500万人が弔問した逝去政局に続く時局宣言政局で鎮火した。各界各層の数万人が李明博大統領の謝罪と国政転換、南北関係の正常化などを時局宣言によって主張した。時局宣言には、現政府が発足以降に破壊した民主主義や南北関係を正常化させるべき当為性が含まれている。青瓦台の不適切な政治に対する国内外の問題提起は、昨日今日のことではない。つい最近、国際アムネスティが韓国の民主主義、人権が大幅に後退していると発表したことは、外部世界に映った韓国の姿を見せつけ、我々を赤面させた。
盧前大統領の逝去によって、この国の人権蹂躙や民主主義の後退、南北関係の破綻の現実がすべての関心事になった。検察は被疑事実をメディアに中継するなど、推定無罪の原則から守られるべき水準を破棄しながら盧前大統領の人権を完全に踏みにじった。検察、警察が公権力の執行過程でとった反人権的態度は、ロウソク集会やデモ、竜山惨事
**などで持続的に繰り返された。平和的なデモや集会は源泉封鎖され、市民の広場は警察の車の壁で遮断された。当局は撤去民の生存権の主張を都心テロに追いやり、警察の特攻隊作戦を展開して市民と警察が死傷する惨劇が起こった。
政治権力は、狂牛病牛肉の拙速な輸入に対する国民的抵抗を特定放送局が原因を作ったとして、法によって任期が保障された放送局の社長を強制解職した。青瓦台は繰り返される失政をメディアのせいにしながら、天下り社長の投入などによって放送掌握を試み、メディア悪法で言論市場を金持ちと守旧勢力の所有物に転落させようとしている。市民による生存権の主張、表現の自由と言論の自由への抑圧に対する糾弾が続いているが、青瓦台は車の壁の背後に隠れて民主主義の時計を20年以上前に後退させてしまった。
現政権は、南北関係の平和的交流協力に関するロードマップだった6・15共同宣言と10・4宣言に背きながら、南北関係を冷戦時代の対立局面に転落させることに寄与した。アメリカのオバマ大統領がブッシュ前大統領顔負けの対北強硬策を駆使しているなか、青瓦台はそれに便乗し、戦争も辞さないという態度で北を圧迫している。政治と外交は戦争を防ぐことに主力を注ぐべきだ。そうせずに、相手が指を攻撃してくるなら腕をへし折るぞと言わんばかりの好戦的な態度では困る。現政権の要職参与者の多数が兵役の義務すら履行していないから、このように戦争をよその国の話のように考えるのだろうか?
李明博大統領は、盧前大統領の49日の直前にヨーロッパ歴訪に旅立った。李大統領は数多くの時局宣言で要求された国民への謝罪や、国政転換について知らぬ存ぜぬで通すばかりか、指弾の対象だった4大河川に数十兆ウォンを投入する事業計画を見ろと言わんばかりに発表した。李大統領の外遊直前に起こった非正規職問題に対する解決方法は、その後に訪問することになっていたヨーロッパ連合(EU)議会が昨年末にすでに世界に提示していたが、大統領は非正規職法の延期を注文しただけだった。先進化は彼のおなじみのフレーズだが、非正規職に対するEUの先進化方式からは目をそらしたのだ。
EU議会は昨年10月、非正規職の処遇を正規職と同一にする法律を通過させた。同一労働・同一賃金という職場での人権保護原則を法制化したのだ。EUの非正規職労働者は、これから3年以内に就業期間だけに差があるだけで、他の処遇は正規職と同一な法的保護を受けられるようになった。李大統領は我々の非正規職法が正規職に義務化することは、EUの関連法よりもさらにもう一段階高い労働者の人権伸長措置だということを理解できないのだろうか?
非正規職の解雇騒動が起きるという政府の軽はずみな言動は、分散サービス拒否(DDoS)攻撃の嵐の中でひっそりと行方をくらませた。DDoS攻撃が始まった直後、その背後勢力は北朝鮮だという国家情報院の資料が公開されたことは、尋常なことではない。国家情報院のそのような発表に対して、情報保護の主務部署である放送通信委員会と韓国情報保護振興院(KISA)は、北朝鮮発のIP(インターネット・プロトコル)がないため、技術的に確認が困難だという立場を明らかにした。国家情報院がでたらめな資料を出したと満天下に知らしめて恥をかかせたのだ。
しかし国家情報院の態度は、対北感情を悪化させる心理戦の一つだという印象を与えた。李大統領がEU訪問中に「この10年間の対北支援は、北朝鮮の核武装を支援した」という発言の含蓄性は、国家情報院の向こう見ずな対北攻勢と一脈相通ずるところがある。確実な証拠もなく、まず北を「悪の枢軸」に追いやろうとする伏線がそうだ。国家情報院と李大統領のそのような態度が出てきた直接的な理由は何なのだろうか?それは中断してから1年になる金剛山観光と、現在南北間の交渉が進んでる開城公共団地を狙ったものと思われる。
青瓦台は金剛山観光の再開はなく、開城工業団地に対する北側の要求は絶対に受け入れないという信号をそんなふうに送っているのだという推定が可能だ。李大統領が訪れたEUの現住所は、経済統合によって第1次、第2次世界大戦のような惨劇を源泉封鎖するという努力が結実した場所だ。李大統領がEUで南北関係改善の当為性と合理性を学んだという兆候は、未だに見られない。盧前大統領が6・15宣言の実践方案として北側と合意した10・4宣言が、南北経済共同体の青写真なのではないのか?
李大統領がEU訪問に当たって国家人権委員長が辞退し、「政権は有限だが人権は永遠だ」という発言で現政権の時代錯誤的な反人権政策を批判した。李大統領がEU訪問の過程で、人権先進国として尊敬されていた韓国の人権が後退した点や、EU統合が南北間の経済共同体造成のモデルになりうるということを悟る契機になればと思う。また、4大河川事業に数十兆ウォンの予算を投入する代わりに、サイバーテロ防止などのIT産業先進化に政策転換をすることを期待してみよう。
*時局宣言 現在当面している国内および国際情勢や大勢、その国の時代状況、特に政治や社会的に大きな混乱があったり、何か問題があると判断されたとき、教授などの在野の知識人や宗教界の人々が憂慮を表明し、解決策を求めること。今年の6月、全国93の大学の教授4500人以上を含む、各界の有力者など1万人以上が時局宣言に賛同した。教育科学技術部は、時局宣言に参与した全国教職員労働組合(全教組)所属の教師1万7000人余りの大部分を懲戒処分または行政処分し、88人は解任、停職などの重懲戒とした。
**竜山惨事 2009年1月20日にソウル竜山区漢江路2街に位置する建物の屋上で、篭城をしていた賃借人と全国撤去民連合会の会員、警察、用役職員たちの間で衝突が起きたなかで発生した火災により、多数の死傷者が発生した事件。この事件で撤去民5人と警察特攻隊1人が死亡し、23人が重軽傷を負った。