[東京から]拉致問題、根源的解決方法を探せ/キム・ドヒョン
日本で暮らしていると、北朝鮮と日本の関係について考えることが多い。
比較的慎重で、冷静な方である日本人や政府・マスコミも、北朝鮮に関する話が出ると、完全に一変する。対北朝鮮世論の方向付けを主導するのは、やはりメディアだ。11日付の新聞社説の題だけ見ても、「危機への結束を崩すな」(朝日新聞)、「包囲網で暴走止めよ」(東京新聞)など、比較的進歩性向の新聞でさえ、北朝鮮に対する強硬対応一色だ。
特に放送局はそのレベルがひどい。出演者の中には「北朝鮮は崩壊してもいい国」というふうな超強硬発言をする者も目に付く。ほぼ毎日、もれなく放送される北朝鮮関連のニュースを見ると、冷静な分析報道もたまに見かけるが、興味本位が大部分だ。東京のある外交筋は、10日に発生した『テレビ朝日』による北朝鮮の金正日委員長の三男、金正雲氏の“最新写真”誤報騒動について、「日本の放送局が北朝鮮をどのように扱うかを如実に示した代表的な事件」だと指摘した。
日本メディアの対北朝鮮強硬姿勢は、基本的に国民世論に基盤を置いている。各種の世論調査の結果、70~80%の日本国民が北朝鮮への強硬制裁に賛成している。日本の北朝鮮に対する国民感情は、拉致問題が根源にある。拉致問題の解決が遅々として進まない中、メディアはさらに日本国民の“被害者感情”に火をつけている。ここに最近、北朝鮮が長距離ロケットを発射したことと、第2次核実験まで強行したことが加わり、北朝鮮への先制攻撃が可能な“敵基地攻撃”能力保有論まで、自民党で公に論議されている状況だ。
しかし、かつて対北朝鮮強硬制裁を主張していた「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)の蓮池徹(54)前事務局長は、このような日本社会の雰囲気を憂慮している。最近、『
拉致-左右の垣根を超えた闘いへ』という本で対話による拉致問題解決を主張し、日本社会に波紋を起こした彼は、今月2日の『ハンギョレ』とのインタビューで、日本メディアの責任論を強く提起した。
「放送局の人たちに会う度に、拉致問題がなぜ解決しないのか冷静に扱える検証番組を作ってくれと話しているが、実現していない。視聴率が出ないうえに、政府に逆らえないという理由のようだ。日本の放送局は、北朝鮮のニュースを物珍しい国、奇妙な国というふうなエンターテイメントとして扱っている」
彼は日本政府の責任論も強く主張した。2002年9月17日、北朝鮮と日本政府が核、ミサイルや拉致問題、植民地とした過去の清算を包括的に解決しようという趣旨の『平壌宣言』に署名した。その後、両国政府の間で様々な合意事項があったが、解決に至れなかったことについては、北朝鮮ばかりでなく、短期的・政治的成果に汲々とするあまり、かえって国民世論の反発を買った末、合意事項を破り、仕方なく世論に引きずられている日本政府の戦略不在もあるだろう。
彼の弟で、大学3年生の時に北朝鮮に拉致され、2002年に24年ぶりに帰国した蓮池薫(新潟産業大学専任講師・韓国語翻訳家)も同じような状況だ。彼はハンギョレのインタビュー要請を何度も固辞した後、拉致問題については話さないという条件で2007年にインタビューに応じたことがある。彼は日-朝政府の合意で日本に一時帰国した後、北朝鮮に帰るとしていたが、兄の強い引止めにより「日本の家族を選ぶのか、北朝鮮に残っている子供たちを選ぶのか」という選択に人間的苦悩を重ね、結局は日本への永住帰国を決心したそうだ。
拉致の痛みと家族離散の悲劇を自ら経験したこれら当事者二人の対北朝鮮問題の解決方法が、成果をあげることを期待する。
キム・ドヒョン特派員
* 関連記事
拉致-左右の垣根を超えた闘いへ