背伸びするオバマの対北政策/李鍾元
米オバマ政権が発足してから100日が経った。未曾有の経済危機に対する迅速な対処で、アメリカ国内でも評価点数が非常に高い。各種の調査で平均60%を上回る支持率を記録している。国際的にも就任直後からブッシュ政権の「力の外交」路線との決別を明確にすることで、変化したアメリカの姿を強く印象付けた。アメリカが「悪の枢軸」「不良国家」という烙印を押したイラン、キューバに続き、「反米の急先鋒」ウゴ・チャベス/ベネズエラ大統領とも和解の手を差しのべて握手をした。
この100日間、オバマ政権は山積みになった課題に対して強度の高い「速度戦」を展開した。高い支持率も具体的な成果があったからというよりは、果敢かつ敏捷な対応への期待感に起因する部分も大きい。複合的な危機をむしろチャンスに活用し、短期間に対内外の政策課題に対する基本的なアプローチ方法と考え方を相次いで変化させた手腕は驚異的だ。
電光石火のオバマ政権の対応のなかで唯一、後手に回っている分野は対北政策だ。「核実験と弾道ミサイル発射実験」を宣言しながら、手持ちのあらゆるカードを動員してアメリカを圧迫する北朝鮮に対し、有効な対応策を講じられないまま傍観しているかのような形だ。スティーブン・ボズワース北朝鮮問題担当特別代表が、中国経由で昨日ソウルへ来た。いずれ表面化する米朝交渉を含む多様な外交の行方を占うためにも、オバマの対北政策が慎重な姿勢を見せている理由を検討する必要がある。
第一は、今まで多く指摘されてきた通り、政策の優先順位の問題だ。経済危機への対応が最優先課題であることは今さら強調する必要もない。また、対外政策でもアフガニスタンやイラク、中東問題の方が事態が切迫している。先月23日にようやく、カート・キャンベル東アジア・太平洋担当国務次官補の任命が発表された。前のジョージ・ブッシュ政権の時に、ジェームズ・ケリー次官補が政権発足1ヶ月足らずで任命されたのとは対照的だ。
第二に、対北政策の全般的な再検討作業に一定の時間がかかることも事実だ。ブッシュ政権の時にも、対北政策の輪郭が発表されたのは政権発足から4ヶ月半が経過した6月初旬だった。オバマ政権の場合、北朝鮮の核問題の根本的な「解決」を志向する立場から、その政策検討はより多角的で包括的にならざるを得ない。窮極的な米朝関係正常化など、東北アジアの秩序再編を実行に移す具体的な政策構築には、かなりの時間が必要とされるのはもちろんだ。
オバマ政権は、この準備期間にボズワース代表の訪朝などで雰囲気を改善することによって、包括的な政策検討作業の推進力として活用する考えだったことが伝えられた。このような構想に冷水をかける北朝鮮の崖っぷち戦略が、単純に米朝交渉の戦略なのか、それとも核保有の既成事実化のための保有なのか、北朝鮮の真意と内部状況に対する疑念がオバマ政権内で検証されている。オバマ外交に関与しているヘンリー・キッシンジャー元国務長官が『ワシントン・ポスト』に寄稿した文(4月22日付)でも強調されたように、米朝交渉には関係正常化と核放棄という最終目標に対する相互信頼が重要な基盤だ。この土台が整わない場合、世界的な非核化推進を政権の中心課題としているオバマ政権としては関係改善の果敢な突破口を開くことは難しく、漂流し続けるしかない。徐々に姿を現したオバマ政権の対北政策に対して、北朝鮮も今まで強調してきた「戦略的決断」の具体化に応える必要がある。
李鍾元/立教大教授・国際政治
『ハンギョレ』 2009年05月08日