「米・中・日」の戦略的三角形/李鍾元
アメリカのヒラリー・クリントン国務長官が来週、日本を筆頭にアジア4カ国を訪問する。アメリカの新任国務長官が異例的に最初の訪問地としてアジアを選んだことで、オバマ政権の「アジア重視」を強調するという意図が明確に見える。中東のような火急の紛争地域を後回しにし、緊急の課題があるわけでもない東アジア地域を選んだことに対する疑問も、歴訪発表記者会見で提起された。ヒラリー・クリントンの人気を活用した「微笑外交」の効果が大きく、また、具体的な外交的成果を出さなければならないという負担も小さい無難な地域であるため、最初の訪問地になったのではないかという見解もある。北朝鮮の核問題を含む東アジア政策の再検討がまだ完了していない状態で行う訪問であるため、緊張感が多少低下するのも事実だ。
当面の懸案よりは長期的見識から東アジアの主要国、特に日本と中国を抱き込むための戦略的土台構築に主眼点があるようだ。もちろん、短期的には米国債購入の位と2位の国である中・日の協力が、アメリカ経済の回復にも必須だ。
オバマ政権発足以降、東アジアの外交面では「日本を安心させること」が際立ってきた。アメリカの新任国務長官が最初の訪問地として日本を選んだのは前例がない。クリントン国務長官は上院の任命聴聞会で「日米同盟はアメリカのアジア政策の礎石」だと強調した。伝統的にアメリカの政策文書で繰り返されてきた表現であるが、韓国やオーストラリアなど他の同盟国と区別して別途に扱った形式が目を引いた。
駐日大使には以前、クリントン政権の際に日米同盟の再定義を主導したジョセフ・ナイ教授(ハーバード大)が内定した。国務省と国防省で東アジア政策の実務を総括する次官補には、知日派に分類されるカート・キャンベルとウォーレス・グレッグソンが任命された。このような動きに対して日本政府やメディアは「日米同盟の強化」「日本重視」と歓迎し、安堵する気配がありありと見える。それほどオバマ民主党政権の「中国傾斜」に対する不安と警戒感が大きかったのだろう。
注目しなければならないのは、オバマ政権が志向する東アジア政策が従来の冷戦的「同盟」概念を乗り越えようとしている点だ。「日米同盟」と「日本重視」が中国包囲網の性格を持っていたブッシュ政権のネオコン的概念とは違い、中国を包括する地域協力体制構築の土台という脱冷戦的意味が新たに付け加えられている。具体的には「日米同盟」を足がかりに、「日・米・中」の協力関係構築が、オバマ政権の東アジア外交の中心的イシューとして浮上してきている。キャンベルが主導して昨年6月に作成された報告書「バランスの力」は、日米中三国の高位級協議機構の設置を提案した。国務省副長官に任命されたジェイムズ・スタインバーグが中心になった「フェニックス報告書」(2008年7月)は、より包括的な東アジア地域でのアメリカの課題が「伝統的な同盟国との関係維持が、台頭する新しい地域大国を封鎖したり、脅かすという印象をどうやって避けるのか」にあると指摘しながら、「最善の方法」として「日米中などの三国関係」をはじめとする多層的な地域効力体制の中で従来の同盟関係を「接ぎ木」(embed)することを提唱した。スタインバーグ自身も昨年1月の講演で、「日米中の均衡がとれた三角形が地域統合の牽引車になる」と力説した。
クリントン国務長官は日本で「日米同盟の堅持」を明らかにした後、中国では米中戦略対話の画期的な強化を提唱すると見られている。南北関係の膠着や経済危機により地域での外交的位相と足がかりが顕著に弱化した韓国が、このような「大枠を組む」動きにどのように対応するのか、真摯な苦悩と模索が求められる。
李鍾元/立教大学教授・国際政治
『ハンギョレ』 2009年02月13日