■ 役立たずな朝
翌朝、私は(多分)誰よりも早く目が覚めてしまった。
こんな役立たずの、すっとこどっこいのヨメのままではイカン、と思ったからか
どうかは知らんが、とにかく目覚めてしまったのだ。
あぁ、これが日本だったら、ネギをトトトントンと刻みながら振り向きざまに
「あ、お義姉さん、朝食の準備をしておきましたワ。
何も気の利いたのができなくて、申し訳ないんですケド…。」
などと言いながら、焼き魚、ダシ巻き卵、みそ汁、ひじき、白和え、オヒタシ
とかを作っちゃうのに。(←大ウソです。)
「朝から、そんなモン食えるか!」とツッコミを入れられそうだし、
「だいたい、ここには和食の材料もねぇよ!」と自分でツッコミを入れながら、
ベッドの中でモンモンとすごす。
隣でヤツはまだイビキをかいている。
そうこうしているうちに、お兄さん夫婦も目覚めたご様子。
甥っ子は幼稚園に行く準備をしている模様。
そう言えば、今日から私らが甥っ子を幼稚園に連れて行くんじゃなかったっけ。
「おきろ。あさだ。おきろ。」と、隣人を揺さぶり動かすも、
「まだイイよぉー」とダダっ子のように起きやがらん。
すでに準備が完璧にできた甥っ子が起こしに来て、ようやっとヤツは起きた。
しかし、もう幼稚園の時間はせまってるのよね。
仕方がないから、甥っ子はいつもの通り、パパに連れられて幼稚園に
行きましたとさ。甥っ子的にはそっちの方がウレシイみたいだったが。
あぁ、ここでも役立たず………。
■ フランス万歳!
そしてお昼前に、家族みんなで甥っ子の幼稚園にお迎えに行った。
3歳の甥っ子は、今は幼稚園が午前中だけだけど、来年からは午後まで
あるらしい。そして、2歳の姪っ子は、来年から通うことになるそうだ。
お兄さんが幼稚園の先生に
「あ、コレ、ウチの弟と、そのヨメです。」
と(言ったのかどうかはわからんが)、紹介してくれた。
すると先生は
「まぁ、ご両親がパキスタンからで、おばさんは日本から?ステキね。」
と言ったのかどうかはわからんが、「じゃぽ~ん」と言っていたので
まぁ、そうゆう内容の事を言ってたんでしょうなぁ。
とりあえず、笑って「めるしぃ~」とだけ言って、あとは
「明日は必ず早起きして、この子を連れてくるからよろしくネ。」
って、びびっとテレパシーを送っておいた。
帰りの道すがら、お兄さんが、フランスでは幼稚園が無料であることを
教えてくれた。
なぬっ!?学校が大学までタダなのは知ってたケド、幼稚園もタダ?
大阪の姪っ子が通っている幼稚園は、お月謝がウン万円もするって
ウチの兄嫁はコボシていたんっスよ。
こーの編集長も、子ども預けるのに月にウン万円って言ってたし。
それがみんなタダですかい?
(注;フランス人がフランスの学校に通うのはタダですが、外国人の子供が
フランスの学校に通ってもタダにはしてくれせん。)
しかも、医療費までもがみんなタダらしい。薬もタダ。
うひゃ~、日本って今、何割負担よ?クスリ代もバカにならんし。
それを聞いて、ガゼン私はフランスで子供を産みたくなった。
幼稚園もタダ。大学までタダ。熱出してもタダ。薬もタダ。予防注射もタダ。
それでもって子供が
「ままぁ~ん。ぼんじゅ~。」
とかって、自動的にフランス語も覚えてくれる、と。
うほぉ~、子供産むなら、ぜぇ~ったいフランスぅ。むふ~。
と、一人でコーフン状態になってしまった。
隣で「イギリスもそうなんだケド…」と言ってるのも耳に入らんくらいに。
■ お兄さんはチャレンジャー
午後からは、お兄さんがやってる雑貨店に行った。
雑貨店と一言でいうが、そこには
お香からアロマオイル、食器からフードプロセッサー、電池からヒゲ剃り、
化粧品からストッキング、DIY用品から壁紙、おもちゃから文房具、
マフラーからシーツ、手芸用品からやかん、ライターからCDウォークマン、
ポシェットからスーツケース、腕時計からインテリア置時計、鍋からテレカ、
その他日用品から贈答品まで、本当に“雑貨”がそろっていた。
しかも、時計の修理までしている。
「いったい、何屋やねん!」と、心の中でツッコミを入れておく。
じゃ、私はお掃除でもしましょうかネ。
それとも、商品を並べたり、整理したりしましょうか?
と、思っていると、お兄さんが
「レジスターをやれ。」と言うじゃ、ありませんか。
へっ!?そりゃ、日本のはやったコトありますけど、フランスのは…
「同じ。同じ。」
でも、ユーロと日本円は違うし…
「いーから、そこ(レジの前)に座っとけ。」
と、思いがけず、おフランスで店番をするハメになっちゃいました。うっきー。
お兄さんは
「ま、ビビらんでもえぇから。英語で接客してくれればエェよ。」
と、おっしゃいますが、ビビりますって。
このレジの下にある電話が鳴ったりしたら、どうしてくれるんっスかぁ!?
フランス人って、ウワサ通りフランス語しかしゃべらんじゃないっスかぁ!?
と、(心の中で)訴えるも、お兄さんは接客におわれる。
そーいえば、フランス人は黙って物を買わないし、フランス商人は黙って
商品を売らない。
必ず言葉を交わしてから商品のやり取りをしている。
「まっだ~む、ボウヤの風邪はもう治りましたか?」とか、
「むっしゅ~、今日もいい天気ですね。」(←勘訳)とか。
こーして私がビクビクしながらレジに立っていた時、彼氏は何をしていたか?
→バイトの学生と遊んでいました。
■ フレンチ・オンリー
しかしですねぇ、わたくし、ホンマにフランス語がまったくわからんのんですよ。
バレンタイン用の造花を持って、オバチャンが何やら聞いてきたが、
「他の色はないの?」やら、「在庫は他にないの?」やら、はたまた
「これはいくらなの?」と聞いているのやら、まったくわからんのんです。
あわててバイト君を引っ張ってきて対応させたが、明らかにフランス人じゃない
このおサルに、いきなりフランス語で聞いてくるこのオバチャンもどうよ?
「あい・か~んと・すぴーく・ふれんち・あっと・おーる」と言ってるじゃないの!
はあぁ~、私ってば
きっと今日のイヴォンヌさんちの夕食時の話題を提供してしまったわね。
「ねぇ、アナタ。今日あの雑貨屋に、おサルがいたのよ。」とかね。
その後もビビりながらレジを打ったが、中には値段がかわからん商品もある。
バイト君やバイトちゃんに「はう・まっち?」と値段を聞くが
「じょびじゅべ~ん」(←こうとしか聞こえん)
と、フランス語でしか答えてくれん。
スマンが、わし、フランス語は1から4までしか数えれんのよ。
店の奥で接客していたお兄さんが見かねて
「Seven Fifty」と教えてくれた。
あ、7ユーロ50セントね。
それ以来、バイト君たちは、私に値段を聞かれたときは、手でブロック・サインを
送ってくるようになった。
しっかし…、
君らカレッジ・スチューデントなんやから、数字くらい英語つかってくれい!
《明日はどっちだ?ぱーと8へ続く》