8月12日のハンギョレ新聞に掲載された高橋哲哉氏のコラムです。8月ということで、内容は参院選の結果にからめて「原爆」について書かれています。それではどうぞ。
8月の原爆投下と今日の日本/高橋哲哉
韓国でもすでに知られているように、7月29日の参議院選挙では与党自民党が大敗し、民主党が圧勝した。自民・公明党など与党は過半数に至ることができず、与党多数の衆議院と野党多数の参議院という“ねじれ”国会が出現することになった。
自民党の敗因として年金制度をめぐる政府に対する不満以外にも、安倍内閣閣僚の相次ぐスキャンダルと辞任がまずあげられる。久間章生防衛相の不適切な原爆発言もそのひとつだ。「長崎に落とされ悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている。それに対して米国を恨むつもりはない」と発言した。久間防衛相の選挙区である長崎や広島はもちろん、全国で非難と抗議の声が殺到し、彼は7月3日に辞任に追い込まれた。
1945年8月、広島と長崎に投下された原爆で同年内に21万人が亡くなり、今も26万人の被爆者が後遺症に苦しんでいる。96年に国際司法裁判所は「核兵器の使用は原則的に国際法違反」だという判断を下した。非戦闘員を無差別・大量に殺傷したことが明らかな原爆投下は戦争犯罪であり、被爆国日本の被爆地域である長崎出身の政治家が、それを容認することは許すことができない。
しかし防衛相の「問題発言」が日本のメディアで大々的に扱われたのを見ながら、私自身は率直に言ってある種の違和感を感じたことを告白せずにはいられない。彼の「原爆投下はしょうがない」という発言を聞いて、私は以前の「原爆投下はやむを得なかった」という昭和天皇の発言を思い出した。75年10月の記者会見で広島、長崎への原爆投下に対する感想を聞かれた昭和天皇は「原子爆弾が投下されたことに対しては遺憾には思います。しかし、こういう戦争中であることですから、どうも、広島市民に対しては気の毒であるが、やむを得ないことと私は思っています」と発言したものだ。久間の発言も、昭和天皇の発言も原爆投下は「仕方がない」という点で本質的に違いがない。
しかし昭和天皇の発言に対しては、今回のような激しい抗議や非難はまったくなかった。これは何を意味するのか?
昭和天皇は1945年2月、“国体護持”(天皇制の維持)の保証がないとして、近衛文麿元首相の早期終戦提案を拒否した。その時点で終戦の決断をしていれば、沖縄戦や原爆被害もなかったであろうため、その責任は注目される存在だ。しかし久間の発言は大々的に問題視した新聞、テレビ、政治家たちが昭和天皇の責任問題を扱う可能性はほとんどない。ここに日本社会の決定的弱点が露呈する。大臣の妄言は批判できても、同じ趣旨の天皇の発言は批判されることはないという弱点だ。
95年に日本のNHKが実施した調査を見ると、「広島・長崎への原爆投下は正しかった」と考える人の比率は日本8.2%、アメリカ62.3%、韓国80.5%だった。原爆投下を肯定する人がアメリカよりも韓国に多かったのはなぜなのか?原爆投下が日本の敗戦を決定的にし、植民地支配からの解放に寄与したという見解や、戦後も植民地支配や侵略の責任を明確に認めない日本に対する批判などが理由ではないのか?原爆の惨禍や被害の痛みを理解するためには、まず日本人たちが韓国・アジア人たちに与えた惨禍や痛みを理解しなければならない。これも植民地支配の結果だが、被爆者の中には朝鮮人もいる。日本においてであれ、韓国においてであれ、原爆という悪に対する理解がより一層深くなることを望む。
前のエントリーでとりあげた広島の原爆忌に関する
ニュース映像に寄せられた韓国ネチズンのコメントには、正直、吐き気がするようなヒドいものもあります。まったく訳す気にもなりませんが、気になる方は自動翻訳でも使ってください。このニュースではわざわざ韓国人犠牲者が2万人もいたということを報道しているにもかかわらず、あんなことを書き込むヤツがいるということですね。
照会数やコメント数自体はそれほど多くはないので、これが韓国世論の大勢というわけでは決してない(幸いなのかどうかわかりませんが、リアルでこんなヴァカゆってるヤツにめぐり合ったことはありません)でしょうが、マジで吐きそうです。日本にもアメリカにもヴァカはいますが、韓国にもいるということなんでしょう。
そんなんでヘタれているときに目にした高橋哲哉氏のコラムはぐっときました。いや、「グサっ」かもしれない。
このコラムで取り上げられているNHKの調査についてググっているうちに見つけた
サイトで、高橋哲哉氏は「アジアへの加害の問題を踏まえなければ、ヒロシマ・ナガサキが普遍性をもたない」と主張されています。あぁ、ホントにそうだなと。過去を自分たちの都合のいいように変えても、現実を直視せずに妄想を膨らませても、他がやってるからと開き直っても、それでは何もよくならないよと。そう思いました。今さら、ですけどね。
* 参考 *
被爆者の目と人間の心で
ノーモア ヒロシマ・ナガサキ国際市民会議プレ集会