揺れる安倍政権と“北風”/李鍾元
安倍政権が大きく揺らいでいる。参議院選挙を1ヶ月余り先に控え、相次いで起こった悪材料や支持率下落に焦った様子が明らかに伺える。劣勢を挽回しようと“指導力の誇示”を意図した強攻策を展開しているが、世論に対して空回りするばかりで、むしろ混乱した姿を自らさらす場面も少なくない。“安倍カラー”を出すために、中山恭子拉致問題担当首相補佐官を急に参議院選挙に擁立することにした。だが自民党内でも反対や慎重論が少なくないという。信念や政治的計算が絡み合った“北朝鮮叩き”のカードではあるが、世論の反応は未だに冷淡だ。バンコデルタアジア(BDA)問題で暗礁に乗り上げた“2・13合意”がこれから1ヶ月の間にどのような展開を見せるのかが選挙結果にも少なくない影響を及ぼすだろう。
松岡利勝農水相の自殺が大きな打撃を与えたのは事実だ。現職閣僚の自殺は敗戦直後を除いては初めてのことだ。そのうえ、不透明な政治資金使用や公共事業落札に関する談合に介入したという疑惑が提起された渦中に起こった事件であり、政治的波紋はさらに大きかった。松岡農水相の自殺で政治資金と腐敗問題の追及はうやむやになる公算が大きくなった。談合関連団体の責任者が松岡農水相の前後に相次いで自殺するなど、“巨大なスキャンダル”があるだろうという疑惑はむしろ増幅されているが、死人を鞭打つことは非難される日本社会の風土と心理が、政治的追求の障害になる可能性が高い。
しかし何よりも問題なのは、安倍首相の指導力に対する懐疑的な目だ。当初、主要閣僚経験もなくイメージや人気を土台に首相に就任したときから指摘されていた弱点が、徐々に現実のものになってきた形だ。就任直後、平均70%を上回っていた支持率は下落し続け、今では30%のラインだ。“選挙用の顔”としての大衆的人気が存在理由の大きな部分を占めている安倍政権としては、“危機的水準”だというのが政界の一般的認識だ。閣僚の相次ぐ不祥事、5000万件もの年金記録紛失問題に松岡農水相の自殺など、個別的な事件が支持率下落のきっかけではあるが、それよりは政権運営全般に対する不信や不安が拡散する“総体的危機”だという指摘も多い。
支持率下落に対処するため、今年に入って安倍首相は改憲、集団的自衛権の検討、教育改革など持論である保守右派的議題を前面に打ち立て、野党との対決姿勢を意図的に演出してきた。野党との妥協を拒否し、改憲のための国民投票法を急いで強行採決したのがその代表的な例だ。自らの伝統的支持層を結集すると同時に、強いリーダーシップを演出する意図があることは容易に推測できる。しかし、世論の関心は格差や年金のような“身近な問題”に集中していることを示しており、“右派ドライブ”も空回りしている。改憲についても国民投票法の強行以降、むしろ慎重論が強まった。改憲支持率も下落傾向を示し、平和憲法の核心である第9条に対する改正反対意見も多数を占めている。
参議院選挙を1ヶ月余り先に控えた時点での支持率としては、ここ10年でもっとも低い。野党である民主党が内部分裂にあえいで力を失いつつあり、相対的利益を得ているが、今の状況が続く限り、選挙で敗北する可能性も少なくない。局面打開のきっかけがあるとすれば、2・13合意の破綻や北朝鮮の核問題噴出がその一つになるかもしれない。反対に、六カ国協議が進展すれば、強硬路線の安倍政権としてはより強い逆風にさらされることになる。首相になるまでは、主な局面ごとに“北風”が都合よく吹いて有利になった安倍政権だ。日本が進む方向の分岐点となる今回の選挙でも同じ構図が繰り返されるのか気になるところだ。
李鍾元/立教大学教授・国際政治
(ハンギョレ新聞 2007年6月10日)
いろんなスキャンダルやら年金問題で支持率が下がりまくりなところに参院選となった安倍政権ですが、(そもそもこんなスキャンダルだらけで内閣を維持していること自体が、もとい、こんなのが首相になったということ自体がおかしい、というのはひとまず置いといて)「
保坂展人のどこどこ日記」によると、国会延長→参院選投票日もずらしてしまえ、ということを狙っているようですね。まったく、どこまでも国民の方だけは向いていない内閣だね・・・。
* 追記 *
エキサイトの不調で、トラックバックが送れなかったりしています。(それとgooは相変わらず“goo八分”状態です。)申し訳ありません。ブログ引越ししようかなぁ・・・。