こちらは10月16日のハンギョレ新聞に掲載された高橋哲哉氏の寄稿文です。
タイトルでもすでにグサっとくるものがありますが、読んでいてさらに胸につきささるものがあります。本土日本は知らないうちに沖縄に負担を強いています。そうです。そんな私も本土出身の日本人です。
日本の“植民地”、沖縄の核/高橋哲哉
北朝鮮の核実験発表の衝撃が続いている。これに勢いづいて、強硬策を打ち出しているのが日本の安倍新政権だ。中川昭一自民党政調会長は即刻、「日本の憲法も核保有を禁止していない」と日本の核武装の可能性に言及した。“北朝鮮の核の脅威”に対抗するための、核武装を含む軍事力強化の声も高まるばかりだ。
だからと言って、多くの日本人が実際に戦争に巻き込まれるのではないかという不安を実感しているわけではない。ただ、例外がある。沖縄だ。今月に入って沖縄にアメリカ陸軍の地対空邀撃ミサイル、パトリオット3(パック3)の配置が強行された。北朝鮮が核実験実施を発表した9日、ミサイル本体24機を載せた輸送船が沖縄県うるま市天願橋に入港した。11日、沖縄県警察機動隊は抗議の座り込みをする市民を引きずり出し、ミサイルを嘉手納基地に輸送した。
パック3の配置に反対しているのは市民団体だけではない。米軍基地がある自治体の圧倒的多数が反対している。日米政府はパック3が北朝鮮などの攻撃から沖縄を守ると言っているが、実際に守るのは米軍基地だ。沖縄はむしろパック3の配置によって“敵”の攻撃目標になり、危険性が高まるのではないか。沖縄はかつて太平洋戦争末期のように再び“本土防衛の捨て石”になってしまうのではないのか。沖縄は日本の敗戦後、日本から引き離され、米軍に統治された。日米安保条約によって米軍の傘の下に入った日本にとって、冷戦時代の東アジア最大の米軍基地であるこの島が、本土防衛の捨て石同然だったということを意味している。
1972年の沖縄日本復帰後も、本質的に変わったことはない。沖縄には今でも在日米軍基地の75%が集中している。イラク戦争であれ、北朝鮮の核実験であれ、米軍が緊張すれば沖縄全体が“戦時下”に置かれる。パック3の配置により沖縄が“敵”の攻撃対象になるのではないか。米軍基地が集中し、“敵”に向けられたミサイルが元々配置されている。核兵器すら密かに搬入されているのではないかと考えてしまう。沖縄は今まで常に攻撃を受けるかもしれないという不安と共に存在してきたのだ。
沖縄が日本本土防衛の捨て石になることを強要するのが日本政府であり、それを支持する側が“本土”(ヤマト)の日本人だ。沖縄を訪れる本土の日本人は、広大な米軍基地を見て、ここはアメリカの植民地ではないのかと感じる。それでも日米安保条約を結んで米軍に土地提供と便宜を図るだけでなく、基地の75%を沖縄に集中させているのが日本政府だ。そのような現実を容認しているのがヤマトの日本人だ。このような意味で沖縄は“アメリカの植民地”と言うよりは、“日本の植民地”と言うべきではないのか。
筆者はヤマトの日本人の一人だ。だから私もどんなにこの現実を不条理だと感じ、沖縄の軍事要塞化反対の主張をしたとしても、実際にこの現実を変えることができない加害者の一人だ。沖縄の米軍基地集中に反対するのであれば、少なくとも本土で基地を平等に負担したり、日米安保体制それ自体に反対する道を追求しなければならないだろう。
結局、それは本土復帰の際に多くの沖縄県民が望んだという、平和憲法を沖縄で実現させること、そして日本全体を名実共に平和憲法に合致する国にすることだ。北朝鮮の核実験発表によりアメリカと日本が対北圧力を強化して北朝鮮の“暴発”を触発し、その結果南北同胞が大きな被害を受けるようなことは決してあってはならない。朝鮮半島と東北アジアの平和を追求する人々にとって本当に重大局面がやって来た。
高橋哲哉 東京大学教授・哲学